フィリピン大統領選へ1年、ドゥテルテ継承の有無 国民の高い支持、日米の安全保障環境にも影響
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領の任期が残り1年を切り、後継争いが熱を帯びてきた。
フィリピンでは新型コロナ対策が功を奏せず、東南アジアでも最悪の経済停滞を招いている。だが、歴代大統領と比べて最も高い支持率を維持している。
ドゥトルテ人気を引き継ぐ形で長女のサラ・ドゥテルテ・ダバオ市長が大統領選の有力候補となり、自身も副大統領選への出馬を検討している。中国の膨張によってフィリピンの地政学的な重要性が増す中、次の政権をだれが担うかは、中国との対立を深めるアメリカだけでなく、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を掲げる日本の安全保障環境にも大きく影響する。
破棄通告された訪問地位協定
アメリカのオースティン国防長官は7月末、バイデン政権の主要閣僚として初めて東南アジアを歴訪し、シンガポール、ベトナムに続いてフィリピンを訪れた。最大の目的は、ドゥテルテ氏が2020年2月に破棄を通告した訪問米軍地位協定(VFA)について、存続の言質を直接の会談でとりつけることだった。
これに先立つ5月、バイデン大統領はドゥテルテ氏に親書を送り、早期の首脳会談を呼び掛けるとともにVFAの継続を求めていた。オースティン氏のフィリピン訪問はその回答を受け取る旅だったともいえる。
1998年に結ばれたVFAは、1951年の比米相互防衛条約(MDT)、アキノ前政権下の2014年に締結した防衛協力強化協定(EDCA)と並んで両国の同盟関係を支えている。VFAが失効すれば、アメリカの艦船の寄港や軍人の滞在が難しくなり、同盟維持に欠かせない合同軍事演習が事実上不可能になる。
では、ドゥテルテ氏はそんなVFAをなぜ破棄しようとしたのか。
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