フィリピン大統領選へ1年、ドゥテルテ継承の有無 国民の高い支持、日米の安全保障環境にも影響

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アメリカ政府が2020年1月、ドゥテルテ氏肝いりの麻薬撲滅政策(麻薬戦争)の陣頭指揮を執ってきた元国家警察長官のデラロサ上院議員へのビザ発給を拒否したことがきっかけだった。

警官らが司法的な手続きを経ずに多数の容疑者らを殺害する「超法規的殺人」への批判から、アメリカ上院は2019年12月、関与したフィリピン政府高官の入国禁止や資産凍結を求める決議を採択した。これを受けてアメリカ政府がビザの発給を止めたとみられている。

ドゥテルテ氏は「主権への侮辱」と激怒し、VFAの破棄を指示した。実際の破棄は通告から180日後という決まりがあり、この間、フィリピン軍高官らが大統領を必死に説得し、「破棄延期」が繰り返されたが、ドゥテルテ氏は「継続したいなら見返りを寄こせ」とアメリカ側にコロナ対策支援などを要求し、VFAは宙に浮いていた。

ドゥテルテ氏に振り回された5年間

ワクチン300万回分を手土産にオースティン氏は7月29日、ドゥテルテ氏との会談に臨み、VFA破棄通告の撤回を取り付けた。会談後の記者会見で「インド太平洋の安全と安定、繁栄にとって重要な米比同盟は維持されることになった」と述べたオースティン氏は旅の目的を達し、胸をなでおろしたことであろう。

この5年間、日米の外交当局や安全保障関係者はドゥテルテ氏の言動に振り回されてきた。

南シナ海の領有権をめぐり、フィリピンのアキノ前政権が国際海洋法条約に基づいて提訴した裁判で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年7月に中国の領有権主張を全面的に退ける判決を出した。ところが、大統領に就任したばかりのドゥテルテ氏は間を置かずに中国の習近平国家主席と会談し、援助の約束の見返りに「判決の棚上げ」を宣言した。判決に喝采した日米両政府は肩透かしを食らった。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議では、当時のオバマ・アメリカ大統領に暴言を吐き、予定の会談をキャンセルした。アキノ前政権はASEANの会議のたびに、南シナ海問題で中国を非難する文言を共同声明に入れるよう腐心していたが、ドゥテルテ氏が議長となった2017年、中国批判を回避するよう率先して立ち回った。

中国へのシンパシーを繰り返し表明する一方、中国の南シナ海進出に対して有効な手立てを打ってこなかったアメリカを「あてにならない」と腐してきた。

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