あなたの上司がムダに出社させたがる本当の理由 「承認欲求」に関係?テレワーク進まないなぜ

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テレワークの浸透によって管理職が受ける、もっと大きな影響がある。管理職がうったえる「管理の難しさ」は、従来のような管理のあり方そのものが問われているとも解釈できる。少なくとも屋上屋を架す組織の階層こそ非効率の原因だという見方もできよう。また、そもそも管理職がこれほどたくさん必要なのかという、従来指摘されていた問題がテレワークを機にあらためてあぶり出されようとしている。

そこでテレワークを機に、組織の構造やマネジメントの体制を見直す企業も現れてきた。そうなると当然、管理職そのものの地位も脅かされるわけである。

テレワークがもたらすこうした構造的な変化を具体的にイメージしている管理職は、それほど多くないかもしれない。しかし、少なくとも自分たちにとってテレワークがプラスには働かないことを漠然と感じているようである。

テレワークで「見せびらかし」が困難に

偏差値とブランドだけで大学を選んだ大半の学生たちは就活時期を迎えると、その延長で就職先を探す。会社に入って何をしたいか、その会社が自分に合っているかどうかは二の次、三の次だ。要は有名企業、一流企業の社員というステイタスがほしいのだ。そして、いったんステイタスを手に入れたら、少々待遇が悪化しても、ブラックな労働環境が判明してもなかなか辞めない。

社員にとって有名企業、一流企業ほど共同体としての存在感は大きく、会社に自分を託そうという気持ちになる。

実際に有名企業、一流企業の社員だというだけで承認欲求(尊敬の欲求)が満たされる。例えば取引先や下請会社との間には自ずと上下関係ができ、何かと持ち上げられる。世間からも一流企業の社員は、それにふさわしい能力、経歴、品格を備えていると見てもらえる。

上司や同僚をはじめ周囲の人々、それに会社の社屋やオフィスも彼らのブランドに箔をつける。都心の一等地に鎮座して威容を誇るビルで豪華な装いの応接間に通され、立派な肩書きの人たちに囲まれたら、それだけで相手は気後れするものだ。

ところがテレワークでは、このような恩恵に浴することが難しくなる。実際、物理的に会社から離れて仕事をすると、有形無形のメリットが失われる。自宅からリモートで商談や仕事の打ち合わせをしていると会社の後ろ盾は消え、一対一で勝負しなければならない。

ましてリモートでの商談中に生活臭が漂う自宅の背景が映っていたり、子どもの声やペットの鳴き声が聞こえてきたりすると、「一流企業の社員」というイメージそのものが崩れる。言葉は悪いが「虚仮(こけ)威(おど)し」が利かなくなるのである。

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