ミイラの盗掘がかつて盛んだった仰天すぎる背景 「不老不死の秘薬」と信じられた結果のバブル

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先に触れた通り、ミイラは元々死後の再生を願って作られたもの。そのため、呪術的な要素が万病に効く薬として求められた理由と思われがちですが、実際はそうではなく、もっと現実的な理由があったのです。

ミイラには天然のアスファルトである瀝青(ビチュメン)が使われており、これが万能の薬効成分だと信じられるようになりました。瀝青とは生物の死骸が堆積してできた有機物質で、さまざまな病気に効果を挙げていました。しかも産出量も少なく、貴重品だったのです。

しかしこの説、正確には裏があります。ミイラには瀝青は含まれていないのです。真実は「ミイラの語源」と関係があります。ミイラとは、元はアラビア語の「ムンミア」がギリシア語の「ミルラ」やラテン語の「ムミア」になった言葉。この「ムンミア」こそが瀝青を意味します。黒光りするミイラが瀝青を塗ったように見えたことから、ペルシア語で瀝青を意味する「ムンミア」と呼ばれることになったのです。

始まりは単なる誤解

つまり、始まりは単なる誤解。それが世代を重ねることによって、「瀝青が含まれている」と信じられてしまったのです。

こうした誤った情報はのちにわかったことですが、当時はありもしない薬効成分が信じられ、偽物のミイラまで作られていました。中には天然痘やペストで亡くなった人の遺体の中に黒い粘着性の液体を入れて、包帯でぐるぐる巻きにして乾燥させた粗悪品などもあったようです。それでも加工してヨーロッパに持ち込めば、偽物と気づかれずに売れていました。

これはまだマシな例で、ドミニコ会のスペイン人僧ルイス・デ・ウレタは、1610年に著した『エチオピア王国の歴史』の中でさらに恐ろしい方法でミイラが作られたことを記していました。

捕らえた人間を飢えさせ、特別な薬を何度も与えた上、眠っている間に首を斬り落とします。体中の血を抜いたらそこに香辛料を詰め、藁で包んだ後15日間土の中に埋めます。それを取り出し24時間天日干しにすると皮膚がどす黒く変色し、「本物よりきれいなミイラ」が完成。つまり、捕らえられた人は、生きながらにしてミイラに加工されていたというわけです。

当時のヨーロッパでは、こうしたことまでするほどミイラの需要があったのです。

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