「奨学金2160万円」借りた35歳医師の"遠回り人生" 研究者を断念も、医学部再受験を決意できた訳

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年間で数百万円の授業料がかかる私立の医学部には当然行けなかったので、進学したのは地方にある国公立大学の医学部。だが、それでも学費は年間で約60万円、一人暮らしの費用もかかる。

そこで、野元さんはこの時もまた、奨学金を追加で借りることとなる。

「奨学金の制度についてもたくさん調べていて、そこで見つけたのが医学部奨学金です。月に20万円の奨学金を6年間で合計1440万円借り、卒業後、指定された病院で一定の年数働けば返済が免除になる制度です」

こうして、借りた奨学金の総額が2161万2000円に。医大生になったということで、過去の奨学金の返済が開始されたわけではなかったが、それでも奨学金があることもあって、気は休まらなかった。

「医学部は、留年がとても多い学部。それは学生が怠惰だからではなく、授業の難易度が高くて、ついていけなくなるからです。

でも私が借りていた奨学金は、一度でも留年してしまうと、支払いがストップしてしまうシステムで、奨学金ですべてを賄っている私にしてみれば、『留年=退学』でした。だからこそ、『絶対に留年できない』というプレッシャーが常につきまとっていました。

万が一のことを考え、自分に多額の保険金をかけたのもその頃です。もし、自分になにかあっても、父が連帯保証人である以上、奨学金の返済義務は残るわけで、『迷惑をかけられない』と考えたんです」

そんな、気の休まらない医学部生活を6年送ったのち、野元さんは国家試験に合格。30歳で就労を開始し、研修医を経て、現在は勤務医として働いているという。

医師の奨学金返済事情は?

さて、気になるのは奨学金の返済事情だ。

「大学の学部時代に借りた無利子の第一種は、今でも毎月1万2800円ずつ返していますが、有利子の第二種はすでに一括返済済みです。

一方で、医学部に入った際に借りた医師向けの奨学金は支払い猶予中でして。というのも、『最初から指定される病院で働いてしまうと、自分が望むキャリア形成ができない』という問題があるんですよ。

幸いにも、医学部奨学金は就労後も最大で6年間、猶予してもらえます。だから、今は返済を遅らせて、奨学金返済免除には指定されていない病院で働き、自分の専門性を磨いている最中なんです」

生真面目かつ、計画的な野元さんの性格がにじみ出るエピソードだが、それでも、自分だけでは決断できないこともあるという。

次ページ1440万円を一括返済する可能性も
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