これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。
貧しい家庭出身の人が登場する機会が多い本連載だが、奨学金を借りようか迷っている者の中には中流家庭の人も当然いるだろう。「中流家庭出身者として、そういう人の参考になれたらうれしい」と応募してくれたのが、有本浩さん(仮名/32歳)だ。
「私は5人きょうだいの4番目で、他のきょうだいと大学の在学期間がかぶっていました。また、下にも4歳年下の弟が控えていました。そういう状況だと、両親も簡単にポンと学費は出せませんよね」
独特な教育方針だった両親
貧困家庭でなくとも、近い年齢のきょうだいがいる家庭だとよくあるケースと言えそうだが、有本さんの家の場合は、独特な教育方針の影響もあったようだ。
「両親は私に『大学に進学する意味や価値を理解してほしい』という思いがあったようで、『周りも行くから』という理由で大学に行きたいと考えている私に対して、『大学に行く目的』を指摘。
これはもうわが家では半分、ネタ話になっているのですが、『大学に進学したい理由を、小論文形式の原稿で提出しなさい』と言ってきたんです。
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