「奨学金2160万円」借りた35歳医師の"遠回り人生" 研究者を断念も、医学部再受験を決意できた訳

✎ 1〜 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「当時在籍していた大学では、毎年2~3割が大学院に進学していました。だから、私も進学する気は満々だったのですが、どうしても金銭事情が気になってしまったんです。

修士課程で2年、博士課程で3年かかるとすると、もう不安で不安で。だって、学部向けにすでに借りている700万円の奨学金が、さらに倍に増えるということですよ?

しかも、今の日本は、あまりにも文系研究者が恵まれない環境で、食べられるようになるかわからない。もし研究者の道を諦め、普通に就職したとしても、よほど高収入な仕事じゃないと、1000万円以上に膨らんだ奨学金を返せるとは思えない……。

そうやって悩んでいるうちに、かつて諦めた医者という仕事を、真剣に考えるようになったんです」

悩み抜いた結果、大学3年生を終える頃には、医学部受験を決意。医学部受験の勉強をしながら、野元さんは大学を卒業した。

日本学生支援機構から借りた奨学金は、第一種(無利子)が307万2000円、第二種(有利子)が414万円で、合計で約721万円。これらは未就職を理由に返済を猶予してもらい、故郷の実家に戻って勉強漬けの日々を再開した。

金銭的な余裕はないので、当然ながら予備校に通う選択肢はなかった。ある意味、高校時代よりも厳しい、ひとりぼっちの宅浪生活だ。

「両親には『この先どれほどの費用がかかりそうなのか、医師になれればどう返済していくのか』などを計算して、エクセルファイルで医学部再入学への算段を伝えました。許してもらえるか不安だったので、今までの人生で一番緊張しましたが、両親は『いいんじゃない』と呆気なく返してくれましたね(笑)。

とはいえ、私大文系の自分にとって理系科目は未知の領域ですし、知らないことを誰かに聞ける環境でもなかった。とくに数学が苦手で、予備校に通える高校生だったら先生に聞けば一瞬で解決するような問題でも、全部自分で理解するしかありませんでした」

誰とも会わず、家族とも数日間会話しないのが普通の日々。親が予備校の費用を出してくれる富裕層の子どもには、なかなか想像できないかもしれない。

「気が狂ってしまうのではないか」と思う瞬間もあった野元さんだったが、大学卒業から2年後、大学時代を含めて4年間の受験勉強のすえに、ついに国立大学の医学部に合格する。

医学部進学で1440万円を追加

家族もびっくり仰天、祝福してくれた医学部合格だったが、学費の支払いは待ってくれない。

次ページ国立大でも決して安くはない授業料
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事