太陽電池に未来を託す昭和シェル石油の勝算
急ピッチで開拓進める国内外の販売ルート
新工場は第2工場を単に大きくしたものではない。工場内は完全なオートメーション。トラックで運ばれてきたすべての部材・材料は、自動で材料倉庫に搬送され、必要に応じて自動搬送システムで各工程に届けられる。徹底した自動化を進める一方、投資金額の大半を占める製造装置も大幅に改良。第2工場と比較すると、従業員1人当たりの生産量は約3倍、単位生産量当たりの償却コストは2・5分の1になり、生産性・投資効率とも飛躍的に上がる。
ただし、こうした新工場のコスト競争力をフルに発揮するには、立ち上げ後、早期に高い稼働率を実現する必要がある。固定費負担の重い装置産業である以上、低稼働率は多額の赤字に直結する。となると問題は、工場のキャパに見合っただけの量を売りさばけるかどうか。何しろ、新工場がフル稼働すると、既存工場を含めた生産量は11年で500メガワット、通年稼働となる12年は倍にハネ上がる。10年度の推計販売実績が70メガワットのソーラーフロンティアにとって、容易にさばける量ではない。
当然、同社もさまざまな施策を打っている。昨年の太陽電池の世界需要は1万3000メガワット(前年比65%増)で、その7割以上を欧州が占める。そこで全体の7割を海外で販売する計画を立て、昨年春、最大マーケットの欧州と今後の需要拡大が期待される米国で、同社初となる海外販社をそれぞれ立ち上げた。
昨年10月には、世界で再生可能エネルギーのビジネスを展開する米GEと提携。GEはメガソーラー(大型太陽光発電施設)事業の拡大を目指しており、ソーラーフロンティアは自社で製造したCIS太陽電池をGEブランドでOEM供給する。「当社はまだ世界的なネットワークが少ないので、有力企業との戦略提携をうまく活用したい。GE以外の企業ともいろいろな話を進めている」(亀田繁明・ソーラーフロンティア社長)。サウジアラビアでは、昭和シェル株主でもある国営石油会社のサウジアラムコと共同で、CIS太陽電池を使った小規模分散型電源の実証実験を開始する。
国内でも販売ルートの整備を急いでいる。1年前は特約店が全国で30店に満たなかったが、電気工事業者、建築・建材業者を中心に10年末には140店へと拡大。こうした特約店のスキルアップに力を入れる一方、年内にその数を全国で200店にまで増やす計画だ。「予想した以上に世界の需要は旺盛。性能が高く、価格もリーズナブルであれば、商品は売れる。すでに今年生産する量の多くは販売のメドが立っているし、来年もそんなに心配していない」と亀田社長は自信を見せる。