太陽電池に未来を託す昭和シェル石油の勝算

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CIS太陽電池工場に1000億円の大投資

この巨大な新工場が稼働すると、ソーラーフロンティアの生産能力は一挙に12倍の年980メガワットへと拡大。国内勢では三洋電機(10年度末の生産能力計画は年565メガワット)、京セラ(同600メガワット)を飛び越し、最大手のシャープ(同1070メガワット)と肩を並べることになる。海外では中国・サンテックパワーがすでに倍近い年1800メガワット規模にまで能力を増やしているが、それでも現時点で見るかぎり、年1000メガワット級のキャパシティは他の海外上位企業と比較しても遜色ない水準だ。

親会社の昭和シェルが、第3工場への投資を最終決定したのが09年9月。投資金額は1000億円。主力の石油精製販売事業の設備投資3年分以上に相当する金額で、もちろん国内企業による太陽電池工場への投資としても過去最大だ。「昭和シェルはたかだか年産数十メガワットの会社。いくら何でもむちゃすぎる」。「まげを結ったばかりの力士が、いきなり横綱に勝負を挑むようなものだ」。当然のごとく、他の太陽電池メーカーは一様に、後発企業による巨大工場新設を無謀と受け止めた。

しかし、当の昭和シェルは至って強気だ。「確固たる勝算があるからこそ、これだけの大きな工場にチャレンジした。国内はもちろん、世界で勝てる工場にしてみせる」。ソーラーフロンティアの技術責任者、栗谷川悟・執行役員技術本部長はこう言い切る。その自信の根拠とはいったい、何なのか──。

実は、今回の新工場は規模以外にも大きな特徴がある。現在、世界で流通する太陽電池の大半は、シリコンウエハを敷き詰めて作る「結晶系」製品だが、ソーラーフロンティアが作るのは新型の「CIS薄膜系」。ガラス基板上に銅、インジウム、セレンなどによる極薄合金の膜(光吸収層)を形成した太陽電池で、使用材料や構造、製造方法のすべてにおいて、従来の結晶系製品とは異なるものだ。

大量のシリコンを必要とする結晶系太陽電池に対し、CIS薄膜系は使用する材料が少量で、製造工程も少ない。このため、発電性能(変換効率)を高めた製品を大量生産すれば、従来の結晶系太陽電池よりもスケールメリットが出やすく、製造コストも下げられる。しかし、技術的なハードルは高く、商業生産する企業の数、生産量とも世界的にまだ少ない。今回の宮崎第3工場は、そのCIS太陽電池を真の意味で量産する世界初の工場でもある。

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