山本正已・富士通社長--地産地消でグローバル化、米国は提携を武器に攻略

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──海外売上比率が50%にもなると、生産体制の見直しも必要になりそうです。

ロジスティクスを含めて、効率がいいのは地産地消だ。IAサーバーやパソコンは、すでにアジア圏向けを日本で、欧州圏向けをドイツで生産しており、体制は整っている。中国ではハードよりもパッケージソリューションのカスタマイズや、年内に稼働予定のデータセンターを中心とするサービス事業が中心となる。

今後、海外の需要が飛躍的に伸びていけば、海外でのハード生産拠点も検討する可能性がないとはいえないが、国内生産が空洞化することにはならない。グローバルでクラウドスペシャリスト5000人を養成することを打ち出しており、国内でもサービス事業では人員が増える方向にある。国内の雇用は守る。

--クラウドは今ICT産業にとって共通の成長テーマですが、これによってどんなビジネスが生まれてくるのでしょうか。

次の中期計画が目指すことになる13年度には課金制のサービス事業の比重が高まるため、売上高が飛躍的に伸びるとは考えにくいが、クラウドは応用範囲が非常に広い。農業や、医療をはじめとする社会インフラ系の事業への展開が期待できる。たとえばスマートフォンを利用したネットワーク型の医療サービスの開始。これまで知恵と勘頼みだった農業分野でも、さまざまなセンサーや気候情報とドッキングすることによって飛躍的に生産効率を上げられるなどの可能性がある。

--クラウドサービスの基盤として、遠からずスーパーコンピュータは重要なインフラになりますが、行政刷新会議の事業仕分けでもスパコンがやり玉に挙がりました。

従来なかったサービスが飛躍的に増えると、CPUの迅速化と容量の拡大は不可欠になる。スパコンはなくてはならないインフラだ。昨年9月、国産初のペタスケール(京速)コンピュータを神戸の理化学研究所に納入した。医薬品開発のように世界トップでないと意味がないものだけでなく、スマートグリッドをはじめ、今後クラウドは社会全体の基盤となっていく。目先の財政にとらわれず、国家百年の計として取り組むべきだ。富士通でもそう考えている。誰かがやらなければならない。

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(聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、小長洋子 =週刊東洋経済2011年1月22日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

やまもと・まさみ
1954年1月11日山口県生まれ。76年富士通入社。2002年パーソナルビジネス本部長代理、05年経営執行役兼パーソナルビジネス本部長、07年経営執行役常務兼ユビキタスプロダクトビジネスグループ長、08年システムプロダクトビジネスグループ長。10年4月社長就任。

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