その間に景気が大きく後退することがあれば、日銀はほとんど手を打つことができませんし、異次元緩和によって背負ったリスクも高まります。景気は循環しますから、10年間ずっと景気が拡大し続けることは非常に難しい話です。その点を日銀はどのように考えているのか、私は非常に不安を感じています。
異次元緩和の出口は、成長戦略による経済再生しかない
日銀は当初、次のようなシナリオを描いていました。昨年の異次元緩和で株価を上昇させ、資産効果などによって景気が浮揚している間に、政府にきちんとした成長戦略を打ち出してもらう。そこで経済の底力が上がった段階で2度目の消費増税を行って、財政を健全化させていくというものです。
ところが、実際は、経済を底上げするような成長戦略は出なかったうえ、2014年4月の消費税増税で、景気は予想以上に落ち込んでしまいました。挙げ句の果てには、消費増税の延期が決定されてしまったのです。
日銀としては、政府に来年の消費増税を決めてもらうために、2発目のバズーカ砲を撃って援護射撃をしたわけです。ところが、消費増税は延期され、安倍首相に梯子を外された形になってしまいました。財政再建も遠のき、これだけ膨らんだバランスシートを抱えて、忸怩たる思いをしているでしょう。財政再建が遠のくということは、それだけ、国債の保有リスクが高まるということです。
今後、財政赤字はますます膨らんでいきます。国債残高が増えていきます。支払い金利も増えています。万一、金利上昇などあれば、利払いは加速度的に膨らみます。しかも、異次元緩和の出口は見えない状況です。
では、政府はどうすればいいのでしょうか。結局、解決策は経済が順調に発展すること以外ありません。少子高齢化がますます進んでいく中で、日本の経済を発展させるために、実質的に経済を底上げするような成長戦略を打ち出すしかないのです。
例えば、大胆な規制緩和や、法人税の思い切った引き下げ。それによって集まった資金を、有望分野に重点投資する。こうした成長戦略を政府主導で行うことが必要ですが、利権の代表が集まる自民党では、大胆な政策を打ち出すことは難しいかもしれません。
異次元緩和の出口と経済再生の道を、日銀や政府はどのように探っていくのか。第3次安倍内閣発足後も、この点に注目し続けることが大切です。
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