ちなみに、フルサポートやハンズオンをうたっているVCでも、そのような「ハンズオフ」または「中途半端な関与」や「大企業的正論」のみを振りかざし、余計にベンチャーを混乱させるようなケースが非常に多いのが事実です。将来的にVCを選ばれる際には、投資先ベンチャー企業への関与のスタンスだけでなく、投資方針にも気をつけて選ぶようにしてください。
大企業とベンチャー、異なる点も多い
では、「どのような意識で現時点を過ごすか」です。
まず「著名キャピタリスト」の方が大企業への就職を勧められたのは、「大企業における仕事のやり方や新規事業の作り方を見て勉強せい」ということもあると思われますが、たとえば大企業における新規事業とベンチャービジネス創出には、大きく異なる点が多いものだと私自身は思っております。正直、将来を考えた際に、そこで経験すべきことはかなり厳選すべしと思います。
ちなみにこれは大企業には大企業の、ベンチャーにはベンチャーのやり方があるというだけで、どっちが優れているとかいう議論ではありません、念のため。
両者においては、当然、スピード感、つまり事業運営などに関する時間軸だけでなく、意思決定における時間軸も変わってきます。ましてリソースやインフラの面でも資金的な手当てや人材の確保、事業計画に求められる要素やそもそもの位置づけ、そしてかかわる人たちの危機感や当事者意識といった面でも非常に状況が異なります。大企業におけるそういった面での経験を、将来、ベンチャービジネスへそのまま当てはめようとするとかなり無理が生じてしまう、ということをまずはご認識ください。
「とがった実績」を出すことに注力
とは言いながら、せっかく入社されたわけですから、将来、役に立ちそうな経験をするというだけでなく、実際にMさんご自身が何かしらの実績を出すことに執念を燃やすべきでしょう。そういった意味では、漠然とどこかの部署へ所属するのではなく、当然、新規事業、または各種投資事項にかかわる部署に所属するのがよいと思います。そのうえで「とがった実績」を出すことに注力しましょう。
「将来、役に立ちそうな」という文脈で言うと、VCの仕事の主なものとしては「事業の目利きと投資・育成」があるわけですから、事業的視点と財務的視点の両方の経験を積むことができるとよいですね。ベンチャー支援とは要は総合格闘技ですので、オールラウンダーであることが求められ、学ぶべきことは多いのです。
また、ベンチャーにかかわる人間としては、上司や周りに言われたことや既存のやり方をそのまま受け入れるような受け身型の仕事では絶対にいけません。積極的に、そしてせっかくの大企業のインフラを利用して、ご自身の実績を、なるべく新規事業にかかわる分野で積んでいくことができるといいですね。
実際に、ご自身で新規事業を立ち上げる、事業計画を策定する、そして資金手当てをして(この場合は現在の大企業の経営陣の方へプレゼンをし、資金提供を受けるということ)、実際に人をそろえて事業運営に携われると最高だと思います。
そして、情報サービス系の会社とのことですから、先ほどの「事業の目利き」という意味でいうと、少なくともその分野にかかわることでは、自社や自分の仕事の範囲だけでなく、業界全体のトレンドや将来性といったことを語れるレベルでないといけません。その中で新規に事業を起こすチャンスを見いだしていけるレベルまでになれるか否かが、まずは勝負です。
これは漠然と毎日を過ごしていては、決して身に付きません。業界への理解だけでなく、問題意識をつねに持ち、好奇心をつねに持って仕事に臨むことが求められるでしょう。社内の優秀な方にどんどんアプローチして教えを乞うことも有益かもしれません。
先ほど申し上げた投資にかかわる事項、という意味では、事業計画策定や投資に当たっての企業価値算定手法、判断基準といったあたりをきちんと経験することができればプラスになるかもしれません。そう考えると、会計やファイナンス面での経験や知識も重要ですよね。
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