「再エネ」最大限導入へ、問われる国の本気度 九電ショックでわかったソーラーバブルの真実

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一方、再エネの導入最大化に向けた技術的課題にも対処する必要がある。これはまさに、経産省の系統WGが年末にまとめる方向で議論している問題で、電力会社がどこまで再エネの接続可能量を増やせるかが焦点となっている。

その短期的な対策としては、再エネ事業者自身が供給超過時に無償で行う出力抑制や、地域間連系線を活用した広域での需給調整、太陽光による昼間の余剰電力を使ってくみ上げた水を夜間に落として発電する揚水発電の活用、さらに再エネ発電量の予測技術の向上や蓄電池の活用などが挙げられる。

ただ、経産省主導による検討手法には大きな問題点が指摘される。関西大学システム理工学部の安田陽准教授は、「再エネの受け入れに技術的上限はないというのが国際的な共通認識。接続可能量などと言うのは日本の再エネ導入技術の敗北を意味する」と語る。時間単位の出力抑制など、再エネ接続義務を徹底できる態勢の整備こそが先決。「安易に接続可能量という上限を決めていいものか、グローバルな観点から検証する必要がある」(安田氏)。

 経産省は「最大限導入」を多用するが

系統WGでは、接続可能量を決めるうえで、東日本大震災前の過去30年間の原子力発電の設備稼働率の平均を前提として、原子力の枠取りをしようとしている。大震災の経験を踏まえず、「脱原発依存」の政府方針や国民総意にも反する。「経産省も電力会社も原発最優先の古い発想に凝り固まっている。このままでは、ITの技術革新で日本が乗り遅れたように、エネルギーの技術革新においても世界の潮流から取り残されてしまう」と、飯田氏は警告する。

経産省は、審議会の資料などで「再エネの最大限導入」という表現を多用している。だが、12月2日の新エネルギー小委で委員の1人が指摘したように、「最大限」の意味がはっきりしない。

今年4月に閣議決定された第4次エネルギー基本計画では、2030年の全発電電力に占める再エネ比率を、水力も含めて21%とした前回の基本計画の目標を上回る水準を目指す、としている。ただ、2050年に再エネ比率80%を目標とするドイツなどと比べ、非常に不明瞭だ。そもそも前回の基本計画は、原発比率約50%を前提としており、これを基準とすること自体の妥当性が疑問視される。

再エネ最大限導入に向けた本気度を示すためには、政府は今こそ、具体的かつ高い新目標を国民に明示すべき時だ。そのうえで、送電網の増強など、目標を達成するための中長期で具体的なロードマップを策定する必要があろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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