「再エネ」最大限導入へ、問われる国の本気度 九電ショックでわかったソーラーバブルの真実

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また、現行制度では、設備認定を取り、電力会社に接続申請した時点で、買取価格が決まる。これを、接続契約を結んだ時点か、運転を開始した時点まで遅らせれば、同様の効果が見込まれる。経産省では、「買取価格の見通しが立たないと、再エネ事業者の資金調達が難しくなる」との懸念を理由に、接続契約時にする方向だが、ドイツなど諸外国では運転開始時で運用しており、塾考が必要だろう。

不適格な業者の排除も一層徹底する必要がある。同じ土地で複数の業者が設備認定を受けているケースや、売電権利だけ取って、設備コストが下がるまで運転開始を意図的に遅らせるケースも多い。その対策として、今年4月から認定後180日を過ぎても場所や設備の確保が確認できない場合に設備認定が失効する「180日ルール」が定められ、順次、取り消しが進められている。

しかし、「各地でヒアリングしている感触からすると、地方には実現の見込みのない案件がまだまだ多数残されている」と、農林中金総合研究所の寺林暁良研究員は語る。ふるい分けを強化すれば、「再エネの導入実態を正確に把握でき、接続受け入れ余地も生まれてくる」(寺林氏)。

長期的ビジョンと地域主導の重要性

「エネルギーの安定供給のためにも、もっとバランスのとれた再エネ政策を推進すべき」。大和総研環境調査部の物江陽子研究員は強調する。「これまで日本の再エネ政策は太陽光発電を重視してきた。FITでも、太陽光に有利な条件が提示され、結果的に導入量の98%が太陽光に集中している。だが、太陽光は発電量の変動が大きく、エネルギーの安定寄与という点では限定的。世界的にも、発電量で見た再エネの本丸は、風力とバイオマスだ」(物江氏)。

とりわけバイオマスは、出力変動が少なく、稼働率が高い安定電源。「日本は林業が盛んなドイツを上回る豊富な森林資源を持ちながら、路網整備が遅れるなど、林業の生産性が低い。欧州諸国のように長期的ビジョンを持って、先を見据えた投資を行うことが必要」と物江氏は説く。

制度設計の問題だけではないという意味では、地方自治体の関わり方も問われている。大分県の湯布院でメガソーラー建設を巡って反対運動が起きるなど、事業者と地元の対立も増えている。「地域がもっと主体的に再エネ事業にかかわる姿が望ましい」と寺林氏は言う。

環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、「再エネには地域のオーナーシップが大事だ」と唱える。「外部の資本が土地を囲い込んで、自治体は地代や固定資産税だけ手にして何も考えないというのは、地域社会のあり方として好ましくない。再エネを地域の人たちが担い手となってやる場合、外部資本が植民地的にやる場合に比べ、20年間で倍ぐらいの収入が期待できる」(飯田氏)。

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