群衆の組織化が、世界を大きく変える 創造的活動こそが、経済を活性化する

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群集は、強力な指導者が現れ、彼らの生来の狂気を抑制し、輝きと活力、才気にあふれた市民へ変容させることを求めていると彼は考えた。ムッソリーニとヒトラーは、ル・ボン氏の著作からインスピレーションを得てファシズム、ナチスのイデオロギーに取り入れた。

しかし今世紀において、「群集」という言葉はまったく異なる意味と政治的価値を持つ。クラウドソーシングやクラウドファンディングは、新たな種類の群集の概念を生み出している。組織のテクノロジーにはエラーがつきものであり、実験が必要となる。ウィキペディアが2001年に開始されたとき、その成功を確信する人はいなかっただろう。

2012年に米国で、企業に対する真のクラウドファンディングを推進するJOBS法がオバマ大統領によって署名されたときも、それは1つの実験だった。多くの批評家はこの法律がアマチュア投資家の搾取につながるだろうと批判した。しかし、JOBS法が成功しなくても、アイデアは捨てず修正を試みるべきだろう。

一致団結した活動を推し進められるか

われわれが究極的に必要としているのは、世界の人々による一致団結した創造的な活動を推し進める経済機関だ。それは、中心的な指導者が支配するコーポラティズム的な機関ではなく、現代の群集による流動的な活動に原動力を見いだすものであるべきだろう。

組織はその有用性を超える勢いによって動かされていくため、活動の一部は破壊的にならざるをえないだろう。しかし、人々がそれらの組織にキャリアと将来性を見いだせるような継続性も必要となる。新たな形態の経済組織を実験・設計する必要を認めることは、公正や同情を捨て去ることを意味しない。

週刊東洋経済2014年12月6日号

ロバート・J・シラー 米イェール大学教授

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Robert J. Shiller

ノーベル賞受賞経済学者。1972年にMITで経済学のPh.D.を取得。「資産価格の実証分析」を評価され、2013年にノーベル経済学賞を受賞。2000年に刊行された『投機バブル 根拠なき熱狂』は、アメリカのITバブル崩壊を予言した書としてベストセラーとなった。同じくノーベル経済学賞を受賞(2001年)したジョージ・A・アカロフとの共著『アニマルスピリット』も、サブプライムローンに端を発する金融危機を理解する書物としてベストセラーとなった。著書に『それでも金融はすばらしい』『不道徳な見えざる手』(アカロフとの共著)など。

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