今、こうやって世界中に「Kawaii」がはやっている、と聞くと、表面的な部分だけがピックアップされてしまう。しかし、そういったものは戦後の少女文化の中で脈々と受け継がれた中で作られたもの。そこがごそっと抜け落ちてしまうと、ただの流行として消費されてしまうだけになります。そこが僕が懸念するところです。
おもちゃ屋さんや駄菓子屋さんでの体験
――増田さんを語る上で「カラフル」という要素は欠かせないと思いますが。
なぜ僕がカラフルなものにこだわるかというと、家が商売をやっていたことが大きい。学校から帰ってくると、親からは邪魔だから外に行ってなさいと言われるわけです。そこでおもちゃ屋さんとか、駄菓子屋さんに遊びに行くわけですが、そこにはカラフルなパッケージが並んでいて。何を買わなくてもすごくワクワクした思い出があります。
子供時代って、自分は何にでもなれると思っていたし、未来に希望を抱いていたじゃないですか。そういう子供時代の象徴が、色なんじゃないかと思うんです。でも大人になるにつれて、どんどん自分を狭めて窮屈にしてしまう。だから大人も、そういった色にひとつでも気づくことができたら、豊かな人生が送れるんじゃないか。それが僕のアーティストとしてのメッセージなんです。
――今回の『くるみ割り人形』がコントラストの強い極彩色の映像になったということも、そういったテーマが根底にあったと。
僕が小学校2年生の時にこの映画を観たときは、本当にカラフルな映画だと思っていたんです。でも大人になって改めて観てみると、少しくすんだ色に見えた。それは大人になって、本当は見えていた色が見えなくなってしまったのではないかと思ったんです。だからその当時に観た色を再現すれば、ワクワクするものが作れるんじゃないかと思ったんです。
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