トイレットペーパーの知られざる「表と裏」 裏側でふく人は、ちょっと損をしているかも

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世界初の高速風ハンドドライヤーは三菱が開発した

三菱電機「ジェットタオル」

次に「ハンドドライヤー」の歴史を見てみよう。ハンドドライヤーとは、手洗いした後、手を温風で乾かす機械だ。

あなたはハンドドライヤー派だろうか、それともハンカチでふく派か。

「日本人はハンカチで手をふく文化があるので、日本のトイレにおけるハンドドライヤーの設置率は意外と低い」。三菱電機のハンドドライヤー「ジェットタオル」を製造する中津川製作所の営業部新事業推進グループマネージャーの永石俊郞さんは話す。

「今、日本の業務用トイレは1200万カ所あり、そのうちハンドドライヤーを設置しているのは、わずか8%にすぎません。22%はロールタオルやペーパータオルで、残り7割は未設置」。つまり、未設置のトイレは、どうぞ手持ちのハンカチでふいてくださいということ。ここにハンドドライヤー市場の開拓余地が大きく広がっている。

1993年、世界初の高速風「ジェットタオル」を発売

実は「ジェットタオル」は1993年に世界初の高速風で水滴を飛ばし、スピーディに乾かすハンドドライヤーだ。それまでは、温風でゆっくり乾かすだけの製品しか存在しなかった。

その後、他社の高速風ハンドドライヤーも登場したが、「ジェットタオル」の特徴は、「サイドオープン」形式である。ボディの横が開いているので、横から手を入れやすい。

「ボディの横が開いていないと、真上からしか手を入れられず、背の低い人や子どもは使いづらい。また、手についている水滴が自分に跳ね返ってしまう」

世界初の開発から22年目の今、ハンドドライヤーの国内市場は全体で年間10万台強。そのうち三菱電機は年間5万台弱、実に5割を占める。

海外にはハンカチで手をふく文化がない!?

だが日本より海外のほうがハンドドライヤーのニーズが高いという。「海外にはハンカチで手をふく文化があまりないからです」。同社は欧米、中国、台湾、ベトナム、タイなど36カ国に進出している。

日本と海外で、ニーズに違いがあるのだろうか。

「ハンドドライヤーに求められる機能は『速乾性』と『衛生面』のふたつ。海外では速乾性のほうが優先され、日本では衛生面のほうが優先されます」。日本人はトイレだけでなく、ハンドドライヤーにも清潔さをいちばんに求めるらしい。

今年6月にモデルチェンジした「ジェットタオル」は、ボディ全面に抗菌加工を施した。さらに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液でふき掃除ができる樹脂を採用。「ノロウイルス対策などで使われる強い薬品です。普通の樹脂だと、何度もふくと割れてしまう」。

営業戦略として、日本における7割の未設置の施設には、衛生面を強調する。そして、ロールタオルやペーパータオルを設置している22%の施設には、省エネを強調する。震災直後、節電のためにハンドドライヤーを使用禁止にした施設が多かったが、「実は1回の使用につき電気代が0.04円。240回使っても10円程度。省エネ商品なのです」。

また、多様な施設からのニーズに応えて、改善を繰り返している。たとえば、騒音の問題。1993年に「ジェットタオル」を発売したとき、まずパチンコ店から普及していった。「お客様がトイレに行って、あっという間に手を乾かせて席に戻れるからです。何より、店内がうるさいので音が気にならなかった」。

「ウェ~ブノズル」

しかし、病院やホテルなど、静けさを求める施設では騒音になってしまう。低騒音を追求し続け、1993年の71デシベルから2013年は56デジベルに、2014年のモデルでは53デシベルに低下した。1年で3デシベル低下したのは、「ウェ~ブノズル」が要因だ。吹き出しノズルの形状を直線から波の形状に変えたことで実現した。

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