10年後の2007年、2倍巻きで12ロールパッケージを発売する。だが、ここでまた消費者の固定観念が壁となった。
「ぱっと見て、なんでこんなに高いの?と思われてしまう。12ロールの価格はこのぐらいというイメージができていたのです。ところがこの商品は2倍巻きだから、それより高い」
今のところ、1.5倍巻きの8ロールパッケージが最も手に取ってもらいやすいという。
プリント柄、香り、来客用……
トイレットペーパーの多様化も進んだ。1972年にプリント柄を発売、花柄が人気となる。初めて香りつきを発売したのは、1992年の「クリネックスソフィットEX 森の香り」。
「ただし香りは難しい。同じ商品の香りでも、強いと感じる人と、弱いと感じる人がいて、問い合わせも両方来ます。最近は柔軟剤などの香りブームで、トイレットペーパーも香りつきが多いですが、無香が好きな人もいます」
香りぐらい自分の好きなものを選びたい、トイレットペーパーまで香っていなくていいという、成熟社会ならではのぜいたくな選択なのだろう。
2011年、消費者のニーズに応えるだけでなく、自ら消費者の需要を喚起する商品を開発した。「クリネックス 極上おもてなし」だ。来客時にもてなすためのトイレットペーパー、というコンセプトである。同社の商品で最も高額、1ロール当たり約100円だ。薄いベージュ色で、レースのモチーフが全面に描かれている。
普段は安価な再生紙のトイレットペーパーを使っていても、お客様が来たときだけは上質なトイレットペーパーを取り付けたいという潜在需要は、確かにあるだろう。
同年、ロールタイプではなく、ティッシュペーパーのように箱から片手で取り出せる「スコッティ 片手でらくらくトイレットペーパー」を発売した。もちろん、水洗トイレに流せる。これは急増する高齢者と介護者に向けたものだ。
「お年寄りやお体が不自由な方は、手先が思うように動かず、握力が弱くなってくるので、トイレットペーパーを引き出して切るという作業が非常にストレスになります。自宅の寝室などにポータブルトイレを置いている場合は、トイレットペーパーホルダーがありません。これは持ち運べてベッドの脇にも置けます」
トイレットペーパーはトイレに設置するもの、ロール状のもの。こうした固定観念を取り払うことが新商品の開発には必要だ。
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