そこで、同社では2010年にシャワートイレ用のトイレットペーパー「スコッティ シャワートイレ用」を発売した。これは「ふんわり厚手」で「3倍のスピード吸収」が特徴。ペーパータオルの性能をトイレットペーパーに付加した。
「ペーパータオルは水に濡れても破けにくい。一方、トイレットペーパーは水洗トイレに流すので、水に溶けなければならない。それを両立させる難しさがありました」
トイレの進化に伴い、消費者のニーズも変化していく。それに対応していけば、新たな需要を掘り起こせる。
ここから日本製紙クレシアのトイレットペーパー開発の歴史をたどる。
1963年、1ロール45円で発売
同社がロール状のトイレットペーパー「スコット トイレットティシュー」を初めて発売したのは1963年。高度成長期に公団住宅に洋式トイレが標準装備され、普及が進んだ流れと符合する。
といっても、当時は高級商品。1ロール単位で個別に包装され、標準価格は45円。シングルのみで、色はブルー、ピンク、白、黄色の4色。新聞広告を出し、百貨店の特設売り場で販売されるほど、目新しいものだった。
洋式トイレの普及とともにロールタイプのトイレットペーパーが広がっていく。
ロール数が少ないと、買う頻度が多くなる。1964年に2ロールパッケージ、1970年に4ロールパッケージ、1985年に12ロールパッケージが発売され、多ロール化が進んだ。
だが、12ロールパッケージは持ち帰るのにかさばり、自宅でストックする際にもスペースを取ってしまう。
それを解消するため、1997年に8ロールで12ロール分の長さという、1.5倍巻きの商品を発売。12ロールパッケージに比べてかさばらず省スペースだが、同じ容量だ。買う頻度も取り替える頻度も少なくて済む。
しかし、発売してすぐは売り上げが伸びなかった。「12ロールパッケージがトイレットペーパーだという固定観念がすでに根付いていましたから。でも一度買っていただくと、リピーターになっていただける商品となりました。当時、洗剤などのコンパクト化が進み、“軽薄短小”がもてはやされた時代でもありました」。
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