2つ目は「気づく人になれる」。ぱっと見て、この便器はきれいだなと思っても、いざ便器に取り組んでみると、ここも汚れている、あそこも汚れていると、いろいろな汚れに気づきます。すると、今までは床にゴミが落ちていても平気だったのが、気になるようになってくる。これまでは見えなかった細部がよく見えるようになります。
3つ目は「感動の心を育む」。自分でトイレ掃除をすると、きれいになったなあと実感します。この実感が感動なのです。よくコンサートに行ったり、お坊さんの話を聞いたりして「感動した」と言いますが、あれは感動しているのではなく、興奮しているだけです。感動と興奮は違う。興奮はすぐ冷めます。お坊さんの話を聞いた帰り道で、もう人を押しのけている。そういうのを感動とは言いません。
──トイレ掃除の感動は持続するのでしょうか。
鍵山:感動しやすくなって、些細なことにもありがたいと思うようになるのです。たとえば、人がエレベーターのドアを開けて待ってくれていたといったことにも、ありがたいと感じるようになる。
4つ目は「感謝の心が芽生える」。感動と感謝は一緒です。感動しない人は感謝しません。
5つ目は「心を磨く」。心を外に出して磨くことができればいいですが、できないでしょう。だったら磨けるものを磨く。間接的に自分の心を磨くことになります。トイレというのは1日に何回も見るものですから、それがきれいだと、見ている自分の心もきれいになっていきます。つまり、いつもゴミだらけの汚い環境にいる人は、心の中も同じ状態ということです。
──耳が痛いです。
掃除活動が日本中、世界中に広がる
鍵山:だんだん「掃除の仕方を教えてほしい」という依頼が企業や学校からも来るようになり、私がトイレ掃除を始めて30年経った頃に、NPO法人「日本を美しくする会/掃除に学ぶ会」が立ち上がりました。
掃除活動は全国各地に広まり、現在、47都道府県123カ所に設立されています。海外ではブラジル、中国、米国(ニューヨーク)、台湾。正式に登録していない活動も含めると、もっとたくさんあります。ルーマニア、イタリアでも実施しています。
──鍵山さんが現地に行ってトイレ掃除の仕方を教えるのですか。
鍵山:はい。私は素手、素足でやりますが、みなさんに強制はしません。気持ちが悪いと思う人は手袋をしてもらって、はき物も履いてもらいます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら