塩野:やっぱり原著作権を有しているために、『ハクション大魔王』もリメイクできたりとか、例えば『アクビガール』のような新しいものもできる。
桑原:『アクビガール』は『ハクション大魔王』を全然知らない幼い女の子から20代OLまで普通に受け入れられています。また日本テレビのグループ化に伴って、今度は朝の『ZIP!』っていう番組の中で、『おはようハクション大魔王』という新しい作品を放送している。常にIPを時代に合わせて変えられるというのは、さっき言った原著作権の強みかなと思います。
塩野:『ZIP!』でやっている『おはよう〜』は、昔を知っている世代も「おっ!」と思いますし、全然元のキャラを知らない人でも、結構シュールなギャグがあったりして面白いということで受け入れられていますね。
桑原:日本テレビとタツノコプロは、もともとは2年前に実写版映画『ガッチャマン』を日本テレビが作る時に、『ZIP!』で『おはよう忍者隊 ガッチャマン』を放送したり、深夜に『ガッチャマンクラウズ』というガッチャマンの新作を作ったりというような取り組みがあったんです。で、タツノコプロと日本テレビの距離が近づいて行くなかで、M&Aの提案があとから乗っかってきた。
塩野:深夜枠でやっている『ガッチャマンクラウズ』なんて、元ネタの『科学忍者隊 ガッチャマン』とかなり違いますね。見たときに「なんだこれ」って正直思いました。「世の中をアップデート」って『ガッチャマン』じゃないじゃん、と。
「ガッチャマンの精神」は継承
桑原:主人公が女子高生で舞台は立川なんですよね。けれども、監督の中村健治をはじめ、作ったスタッフに話を聞くと、『ガッチャマン』というものをものすごく勉強して、ああやって全然違うものに見えても、ガッチャマンの精神を非常に大事にしているんですよ。もちろん笹川ひろし監督にもいろんな話を聞いて、アドバイスをもらったそうです。
『ガッチャマン』の精神とブランドを守りつつ、今の時代に合った作品を作っていけるというのがまた一つ強みです。中村健治ってタツノコの社員監督でアニメ界の鬼才とよく言われているのですが、そういうタツノコプロの今の制作力と昔のIPが掛け合わさって、新しいものが生まれているというのが魅力的だし、理想的だと思います。
塩野:アニメ界って、市場も大きいですけども、やっぱりプレイヤーが多いというか、かなり人々の嗜好も多様化しています。今後、日本のアニメ界、世界のアニメ界はどういった形になると思われますか。
桑原:タツノコプロの経営権取得を提案して、M&Aをやって、タツノコプロのメンバーに加えてもらっているという状況なんですけど、僕自身はアニメってそんなに見てないです。僕の歴史で言うと『宇宙戦艦ヤマト』で終わっていて『ガンダム』もあまりきちんと見てない。まだ、セル画があると本気で思ってましたから(笑)。改めて今、アニメ界というものを体験しているところです。
そうして見ると、毎クール60作品ぐらいの新しい作品が生まれている。去年あたりも200のタイトルが生まれて、今年も多分それを上回るぐらいの作品数が生まれくるということになると、これはいわゆる群雄割拠ですよね。それだけビジネスが広がっていくということだと思いますし、単純に作って売るだけじゃなく、周辺の商品化や海外のビジネスも踏まえてやっています。
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