成田空港の鉄道アクセスはそれでも手薄だ 「日本の玄関」は訪日客に備えているか

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2010年に成田スカイアクセス線(印旛日本医大~成田空港)が開業したことで、スカイライナーの利便性が増した(撮影:尾形 文繁)

それ以上に利用者のニーズがありそうなのは、成田空港を23時台に出発するスカイライナーの新設だろう。成田空港の発着時間は原則6時~23時。現行のスカイライナーでは22時半ごろに成田空港を出発するのがその日の最後。成田エクスプレスとなると、22時前が成田空港発の最終ダイヤだ。もともと遅い時刻に到着する飛行機のみならず、少しでも到着が遅れるとアテが狂うことになる。有料特急以外の電車では郊外の自宅にたどり着けないリスクも出てくる。

これは仮の話だが、たとえば23時半に空港第2ビル(成田空港第2ターミナル)駅を出るスカイライナーが新設されれば、日暮里駅に24時過ぎに着く。平日ダイヤなら、JR山手線(全駅)、JR京浜東北線(桜木町~大宮)、JR常磐線(日暮里~取手)の終電をはじめ、池袋や新宿、渋谷などからの私鉄各線の終電の一部にも間に合う。スカイライナーや成田エクスプレスの最終ダイヤが遅くなれば、夜遅くに到着するLCC便がもっと増え、空港職員や航空会社の運航乗務員にとっても便利になるだろう。

日本の悪しき伝統として、利用者が少ない時間帯に鉄道会社は特急列車(高速列車)を走らせない傾向がある。ただ、航空会社が便を飛ばしている以上、それに対応する空港アクセスを整備することは鉄道会社に求めたいことである。

では、海外の主要な空港ではどうか。香港国際空港では、空港と香港中心部(九龍駅・香港駅)を結ぶ「エアポートエクスプレス」は早朝から深夜まで全て10分間隔で運転。ロンドン・ヒースロー空港でも空港と市内中心部のパディントン駅を結ぶ「ヒースローエクスプレス」も同じく早朝から深夜まで15分間隔で運転されている。どの時間帯でも駅に向かえば、時刻表を見なくても長い時間を待つことなく利用できるという安心感がある。

これに比べると成田空港の鉄道アクセスはやっぱり心もとない。海外からの訪日客から見ても貧弱に感じるかもしれない。一定の改善は見られるものの、今後、京成電鉄やJR東日本が、空港会社や航空会社とさらに協調する体制をこれまで以上に整えられれば、成田の国内外での価値は高まるはずだ。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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