創業1444年!世界最古の企業「金剛組」長寿の秘密 「潰せば大阪の恥」とまで言われる技術力
高い技術と優秀な宮大工を抱える伝統企業を潰してはならない。もし倒産となれば、技術も人材も散逸してしまう。髙松建設をはじめ多くの人や会社が、そうしたことは絶対に避けねばならないとの気持ちから金剛組を支援した。
利隆は「金剛組は、大阪という街が育んだ企業の義理と人情で救われた」と言う。
宮大工の技術交流で磨き抜かれた、圧倒的技術力
金剛組が存続し続けられた第一の理由は、四天王寺の存在と、高度な技術を代々継承し続けてきたことだ。四天王寺の五重塔は、戦災や落雷、台風などで焼失したり倒壊したりしたことはあるが、地震による倒壊は一度もない。地震大国日本でのこの実績が、金剛組の技術力の高さを雄弁に物語る。
金剛組では昔から、正大工職を頂点に複数の宮大工の組が配置されていた。各組にリーダーとなる棟梁がいて、宮大工は金剛組に属するのではなく、その下の組に所属する。金剛組と組の関係は茶道や華道の家元と師匠、または相撲協会と相撲部屋のような関係だ。支配する、されるという関係ではなく、運命共同体なのだ。
金剛組が四天王寺から仕事を受注して各組に割り振る。組における宮大工の採用などは各棟梁に任せられ、金剛組は直接口出しをしない。組は金剛組の専属で、金剛組から依頼された仕事を行った。
技術漏洩を防ぐために、江戸時代まで組は金剛組以外の仕事を勝手に請け負うことを禁じられていた。そのおかげで各組は新規顧客開拓などの営業活動をせず、ひたすら技術習得と継承に努めることができた。
各組はライバル同士で切磋琢磨する関係であり、競争して潰し合う関係ではない。普段は各組が単独で工事を請け負うが、大きな工事になれば共同で請け負う。こうしたときに組同士の技術交流が行われて、金剛組全体の技術レベルが向上する。
現在は金剛組のもとに宮大工の組が8つあり、「匠会」という組織を結成している。宮大工は総勢約100人。
金剛組と各組の間に資本関係はない。建設業法上では元請けと下請けの関係になるが、多田俊彦社長は「そんな薄っぺらな関係ではない」という。宮大工の中には、父も祖父も金剛組で仕事をしていたという人もいて、金剛組との絆は太く強い。他のゼネコンと下請工事会社の関係とは違う。いざ仕事をするときは金剛組ファミリー一体で請け負うという感覚のようだ。
金剛組は大阪で2000坪、東京で1000坪におよぶ大きな材木加工センターを所有し、各組へ作業場として無料で提供している。また、建設部材の図面を実際の寸法で書くことがあるが、そのためには広大な作業場が必要だ。金剛組では、現寸場と呼ばれる図面作成の場所を用意して、これも無料で各組へ提供している。
加工センターや現寸場では組ごとに作業場所が分けられているが、お互いに仕事ぶりが丸見えなので、自然と技術交流がなされる。
自社専属の宮大工を抱え、自社所有の加工センターと現寸場を所有する建設会社は、金剛組だけだ。技術重視の姿勢は何年たっても変わらない。
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