40歳を前に「卵子凍結」した女性の偽らざる本音 費用やリスクを理解し納得することが大切だ

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では実際、凍結した卵子を用いて妊娠を試みた場合の妊娠率はどのくらいなのか。

まずは凍結卵をパートナーの精子と受精させることになるが、移植できる受精卵に育たないケースもある。無事に移植できる受精卵に育っても、移植当たりの妊娠率は18.0%、その後に流産となるケースもあり、出産率でみると12.4%だ(日本産科婦人科学会「令和 2 年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告」)による。

「将来、凍結卵子を使っても妊娠ができなかった場合は、精神的なショックも大きくならざるをえないだろう」と話すのは、済生会横浜市東部病院の産婦人科医長、佐々木拓幸医師だ。横浜市東部病院では、昨年春から健康な女性を対象とした卵子凍結を行っている。

佐々木医師は、妊娠の確率を高めるには35歳程度までの女性が10〜20個程度の卵子を凍結しておく必要があると話す。

冒頭で紹介したAさんも初めてクリニックに行ったとき、医師から妊娠の確率は10%以下だと言われた。妊娠の難しさは知っていたので、落胆することはなかったが、「こんなに手間もコストもかかるのに、結構低いんだな」と感じたという。

だが、卵子が多く採れ、保管する年数も長くなる若年層では、保管費用の負担はより大きくなる。年齢が上がってから回数を重ねる不妊治療よりトータルコストは安くなるが、若いころにその費用を捻出する判断をするのは難しい。

自分の納得感が大切

「自分の人生設計を数年先まで考え、卵子凍結が自分にとって本当に必要なのかを考えることが大切。迷いがあるときは踏み切らないほうがいいです」

卵子の凍結保存サービスやセミナーなどを実施する、プリンセスバンクの香川則子代表は、そう話す。香川さんが大切だと考えるのは、まず妊活の知識をしっかり理解することだ。妊娠はどのような仕組みなのか、どの年齢や段階で、どんな技術を使うことができるのかを知ったうえで、「自分がいつ産むことが幸せな妊娠なのか」を考えるだけでも不安は軽減される。

「日々のリミットを意識しながら過ごすくらいなら、今できることは何かを考える。卵子凍結は今を大切に生きるための技術です」(香川さん)

仕事、妊娠、出産など、女性はさまざまな人生の選択肢を持っている。そのことが時に、女性たちを悩ませ、苦しませてきた。卵子凍結という技術が正しく理解され、必要とする人にとって最良の選択肢となることを期待する。

(2日目第3回は不妊治療の人を襲う「よかれと思って暴言」の苦痛

辻 麻梨子 ジャーナリスト

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つじ・まりこ / Mariko Tsuji

1996年生まれ。早稲田大学卒。非営利の報道機関「Tansa」で活動。現在はネット上で性的な画像が取引される被害についてシリーズ「誰が私を拡散したのか」を執筆している。

 

 

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