日本の部活の何割かは、こういう熱血教員に率いられている。野球やサッカーのように競技に打ち込んでいれば、プロに進む道が拓け、大きな成功につながる可能性がある部活だけでなく、卒業後はほとんどが普通に就職するか、教員になるかというような部活でも熱血指導が普通に行われている。
典型的なのが「吹奏楽」だ。全国規模のコンクールが開催され、多くの生徒がこれを目指して日夜練習に励んでいる。「コンクールに強い名指導者」と言われる教員が何人かいて、その教員のもとには評判を聞きつけて、多くの生徒が集まる。公立から私立にスカウトされる指導者もいる。
高価な楽器を買い与える親も
筆者は大阪市内の老舗楽器店を取材したが、毎年入学式前になると、生徒たちが親と共に店を訪れ楽器を買っていく。「入門コースならこれくらい、と案内するんですが、子どもにねだられてもっと上等な楽器を買う人も多いですね」と楽器店の担当者は言う。大きな金管楽器の中には軽自動車のような価格になるものもあるが、買い与える親もいるという。
「高校の吹奏楽部には楽器は一通りそろっているんですが、古くて手入れが不十分な楽器が多いし、自分の楽器でないとしっかり練習できない、というんですね」
練習用の楽器を併せて購入する子もいる。手入れをするための用具も購入する。木管楽器のリードの削り方の指導を受ける生徒もいる。もちろん定期的にチューニングや修理に来る。
「吹奏楽」と言えば「高校野球の応援」と思いがちだが、吹奏楽の強豪校の中には野球などスポーツの応援演奏を迷惑がる指導者もいる。ある学校では「コンクール組」と「スポーツ応援組」に分けて別個の曲を練習していた。ちなみに、その学校の大型金管楽器は「コンクール組」はチューバ、「スポーツ応援組」はチューバより軽量なスーザフォンと使い分けていた。スーザフォンは甲子園のアルプス席でよく見る大きな朝顔型のラッパだ。
武道や球技の部活では「全寮制」の場合も多い。指導者の中には「寮長」として寮に住み込み、生徒と寝食を共にする場合も多い。そして指導者の妻も「寮母」になって生徒の生活面の面倒を見ることがある。まさに家族ぐるみで部活に打ち込んでいるのだ。そういう寮に行くと、なんとなく「相撲部屋」みたいな雰囲気が漂うが、寮母をする指導者の妻は「プライベートなんてありませんよね」と笑う。
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