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「大学入試を廃止」今こそ本気で考えるべき理由 橋爪大三郎氏に聞く「大学システム改革論」後編

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  • 橋爪 大三郎 社会学者、大学院大学至善館特命教授
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高校まで成績が良く、偏差値が高くて、東大に入ったら、「燃え尽き症候群」になる学生が多い。本人が何をやりたいのかわかっていない。卒業しても使えない。「その書類まとめといて」と言われれば、できるのかもしれないが、そんな能力に、この国の未来はかかっていません。

社会が必要とする能力は、偏差値では測れないのです。

新卒一括採用やめろ

それでも偏差値が大手を振っているのは、企業がまだ、新卒一括採用みたいなことをしているからです。上場企業は、「本社採用でいい人材を採りたい」と思い、学生は、「一流企業に入れば何とかなる」と思っている。その考え方は、どちらも間違いです。

採用担当者に聞いたら、5人採って、1人使えればいいんです、と言っていた。なんというムダだろう。

「本社が人材を採用する」という考え方もそのうちなくなる。そもそも本社が、必要なくなる。本社でやっている仕事は、オンラインやAIで代替できるからです。ずっと安い。オフィスも要らない。

それに、新卒採用より、中途採用のほうがはるかにいい。業務をこなす能力を予測しチェックできるからです。

新卒一括採用は、1人ひとりについての詳しいデータがないから、「出身大学」という大雑把な情報で採用してしまう。しかも、「法学部でも経済学部でもなんでもいいから、〇〇大学の人来てください」でやってきた。このやり方は、企業のためにも、本人のためにもなりません。

ほかにどういうやり方があるか。たとえば大学の教員は、そんなやり方で採用しません。あるポストのため、選考委員会をつくります。候補者のなかから、論文など業績を審査し、誰が優れていて、生産性があるのかをチェックする。つまり、中途採用です。偏差値の出番などない。これが正しい採用です。

同じように、本部長や部課長を採用するなら、採用委員会を作り、書類を見て、面接すればいい。「キミもそろそろ課長かな」なんていう順送り人事では、会社のためにも、社会のためにもなりません。

1人ひとりの能力がよく見えていれば、それにふさわしい採用ができます。日本企業は、そのはるか手前の原始的なやり方をやっていて、それに社会全体が振り回されているわけです。

アメリカの大学生は、専門教育を受けるために修士号をとります。大学で職業教育をするわけです。そして、即戦力になって、その業界に参入する。本気で専門で戦うなら、そうでないといけません。しかし、日本の「本社」は、ただ人間が大勢いるだけで、専門などあってないようなもの。本気で戦う人が何人いるか疑問です。

そもそも日本でも、明治や大正時代は、新卒の本社採用なんて考え方はなかった。本社ビルはとても小さく、本社の社員はごくわずか。全国に工場や現業部門があり、大部分の人びとは、現地採用。これが資本主義です。

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【入試廃止は「アカデミア復権」にも効果がある】

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