「大学入試を廃止」今こそ本気で考えるべき理由 橋爪大三郎氏に聞く「大学システム改革論」後編

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オンライン化して、入試をなくせば、大学に行き損ねた現役世代の人びとも、オンデマンドでいつでも高等教育を受けられます。しかも、安く。リストラや配置転換になっても、1~2年しっかり勉強すれば、スペシャリストとして新しい職場で働けるでしょう。

IT革命で、これから多くの職種がなくなります。ひとつの会社で定年まで勤め上げるなんて、もう無理です。5~10年に一度は職場が変わることを織り込んで、人生を過ごさなければならない。それに相応しい再教育の機会を、すべての人びとに安く開いておかないと、みんなが困るのです。

偏差値なんか意味ない

偏差値なんてものは、1970年まで存在しませんでした。偏差値に意味があるのは、同一の試験を繰り返して、人数(母集団)が十分に大きくて、その結果が正規分布するので、予測がつくから。その条件が満たされないなら、何の意味もない。

橋爪 大三郎(はしづめ だいさぶろう)/社会学者、東京工業大学名誉教授。1948年神奈川県生まれ。大学院大学至善館教授。『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『皇国日本とアメリカ大権』(筑摩選書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)など著書多数。共著に『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、新書大賞2012を受賞)、『 【完全版】選択・責任・連帯の教育改革』(勁草書房)、『世界史の分岐点』(SB新書)など。

たとえば、早稲田は論文のみ、ICUは英会話のみ、東大は数学一発勝負、という入試だったとすると、いくら予備校が模擬試験をして偏差値を計算しても、合格予測に使えません。予備校が、大学入試そっくりテストをして、大学が予備校の試験にそっくりな出題をするから、偏差値万能みたいな錯覚が生まれるのです。

そもそも大学が、なぜ同じような入試問題を出すかというと、高校が「普通教育」だからです。全員に、まんべんなく同じことを教えて、どのぐらい正しい答えが出せるか、という試験になっている。

でも、この能力は、世の中に通用しない。職業人として生きていくのに、必要でも十分でもない。

これに対して、「職業教育」があります。1人ひとりが、適性と能力にみあった別々のことを学ぶ。医学部なら医学、法学部なら法律、文学部なら文学。その中でも専門分野が細かく分かれていて、すべて必要とされる能力が違う。

将棋の藤井聡太五冠は、将棋はめちゃくちゃ強いけど、チェスをやれば普通なんだそうです。それと同じで、専門家は、数学でも、微分積分はすごく得意でも、数論はまったくわかりませんというような世界なのです。専門では、得意な分野がひとつあればよく、あとは不得手でもかまわない。これが職業の実態です。それを準備するのが高等教育であって、高校までの普通教育ではない。

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