――着床前診断については、「命の選別につながる」という観点から、日本産科婦人科学会は慎重な姿勢をとっています。
着床前診断の是非を問う以前に、染色体に起因する流産が多いのはまぎれもない事実。これをなんとかしたいという思いが強い。
学会の慎重論もわかるが、学会の言うデメリットよりもメリットのほうがとてつもなく大きいと考えている。ただでさえ不妊に悩んでいる人たちに、防げるはずの流産を何度もさせる必要があるのか。流産は患者さんの心を殺してしまう。僕たちはそうした経験やお金、時間の負担をなくしたい。お金儲けをしようとかじゃなくて、着床前診断という選択肢がないことで不利益を被っている人の力になりたい。
学会が言っていることが正しいって、誰が決めたのかという話もある。僕が11年住んだアメリカでは、着床前診断が当たり前のように行われている。着床前診断を否定するのであれば、アメリカ全体がおかしいの?という話になってくる。グローバルで見たら日本がおかしいんじゃないかとも思える。
ただし、コンプライアンスを順守するのは当然で、法に則って事業を展開する。
不妊治療の「やめ時」の指標にもなる
――ダウン症など、染色体異常児の権利保護の問題もあります。とても繊細な議論が必要とされていますが、この点についてはどう考えていますか。
もちろん、染色体異常も1つの個性とみなして育てていらっしゃる人もたくさんいる。僕は染色体異常をもって生まれてくる子をないがしろにしようと思っているのではない。
だけど国によってその方針はさまざま。結局、何が正しいかではなくて、価値観の問題。やっぱり、染色体異常をもって生まれた子たちを育てる大変さがあるのも事実だと思う。
あと、不妊治療のやめ時を年齢で考える人が多いが、着床前診断をして何回やっても染色体異常のある受精卵しかできないときを、やめ時にすることもできる。そのほうが、納得感もあるとも思う。着床前診断を受けないという選択肢もある。決めるのは当人たち。僕らは無理強いするわけではない。
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