企業紹介の動画なら、「うちの企業理念は」みたいな話をされるんじゃなくて、社員にいろいろ語ってもらったほうが面白いじゃない? その時、社員にも仕事について質問するのではなくて、「あなたの尊敬する人は誰ですか?」だけのほうがいいと思うんだ。
社員が「会社の上司です」と答えたら、そこから「なんでですか?」と深掘りして上司とのエピソードを引き出せるだろうし、「福沢諭吉です」と答えたら、「明治時代に福沢諭吉が残したこういう業績に憧れて、自分もこの会社で自己実現をしたい」みたいな話を引き出せるかもしれない。
こういう流れで語ってくれたほうが、「学生時代にどんなサークルをやっていた」みたいなことより、よっぽどその人の人間性の深さ・浅さが表れるれるんじゃかな。
加藤:確かにね。「あなたはどんな人ですか?」という質問に対して「僕の尊敬する人は××さんです」と答えたとしたら、いわゆるマニュアル的に答えとしてはズレているように見えるけれど、本質的には適切な応答になっていることはあり得るね。
角田:ちなみに、もし学生時代の僕が「あなたが尊敬する人は誰ですか?」と聞かれたらとしてら、「沖田十三です」と答えてました。
加藤:沖田……十三?
角田:ほらね。「沖田十三って、誰?」ってなるでしょう。そうなったら「宇宙戦艦ヤマトの初代艦長です」って続けるんだよ。
加藤:ああ、そっちか。
角田:それが僕のテクニックなんだけど、「沖田」って言うから一瞬「新選組かな?」とか、「いやでもあれは総司だから、他に歴史上の人物で沖田十三っていたっけな?」と思わせておきながら、「誰ですか?」と聞かれたら、「宇宙戦艦ヤマトの初代艦長」なわけだよ。当然「え、アニメキャラ?なぜ?」ってなるよね。
そこから「『さらば宇宙戦艦ヤマト』で、主人公の古代進が白色彗星に立ち向かって……」といった話を延々と語るんだ。クライマックスで「なあ、古代……」と沖田艦長の幻影が現れる。「命ある限り戦え。わかるな、古代」という沖田十三の言葉で、小学校2年生のときに見た『さらば宇宙戦艦ヤマト』で僕は号泣したんだよね。
加藤:泣いたね〜。
角田:「今まで見た中で一番泣いた映画は『さらば宇宙戦艦ヤマト』なんです」「あれを創ってくれた人がいなければ、僕はエンタメの世界には入らなかったんです」というようなことを、延々と語れるわけだよ。だから、学生時代に「尊敬する人は?」と聞かれたら、僕は「沖田十三」と答えました。
加藤:なるほど。今の話で伝わるのは、沖田艦長がどれだけすごいかではなくて、角田くんがそういうことに感動できる人だ、そこが角田くんの琴線に触れるポイントだ、ということなんだね。