クリエイティブ職が財務諸表を読むべき納得理由 課題解決に必要な「全体」「上流」を見る技術

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そういう意味では、私のようなクリエイティブディレクターを含む、ビジネスマンとして成果を出すことが求められる人は、財務諸表が読めるようになっておく必要があります。クリエイティブディレクターと財務諸表は、なんとも縁遠いように見えるかもしれませんが、ビジネスの課題を解決する仕事をする人なら、すべからく、読み方を学んでおいたほうがいいと私は考えています。

財務諸表は、会社の通信簿です。上場している会社は開示義務といって、公にする義務があるので、四半期ごとに数字を発表する必要があります。会社のホームページのIR情報に掲載されているので、誰でも見ることができます。

そして財務諸表を読むことで、その会社のだいたいの全体像が理解できます。極端な話、単品のペットボトルの飲料を売っている会社があったとしたら、財務諸表を読めばその原価がどれくらいで、広告費がどれくらい、利益率がどれくらいか、というところまで見えてしまったりする。パッケージを作るのにどのくらいお金をかけ、社員の人件費がどのくらいかもわかる。

dofでは、案件に取り組む際に、開示されている場合は必ずクライアントの財務諸表に目を通すようにしています。これを全社員徹底していて、非上場、あるいは未上場の企業で情報が公開されていなかったとしても可能な限り数字でその会社のビジネスを把握できるようにしています。

先に、どんな課題を解決する場合でも、最初にやるべきことは、「クライアント」や「クライアントの周辺」についてよく知っておくことだと書きましたが、そのためには、財務諸表を読めなければ話にならないのです。

質問力の引き出しも増える

財務諸表が読めるようになると、クライアントとの共通言語を持てるようになるし、相手に対しての興味も湧く。必然的に質問力も高まります。

いろいろな経営者と向き合っていくうえで、財務諸表で得た情報をベースに、「2年前の数字がこのようになっていたのは、どうしてですか?」「そのときは、どんなことを考えていたのですか?」といった質問を繰り出せれば、「こいつ勉強しているな」と思わせることにもなります。そもそも私もそうですが、自分の会社について興味を持ってもらえていることは、やはりうれしいわけです。

その会社について、鋭い質問ができるかどうかはすごく重要だし、ここは試されているところでもある。そういう意味からも、課題解決をするには、絶対に財務諸表を読めたほうがいいのです。クリエイティブな課題解決をするための第一歩とも言えるでしょう。

齋藤 太郎 コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター

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さいとう たろう / Taro Saito

慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える。

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