元日本代表40歳「現役続行する男」が挫けない理由 山瀬功治は自分自身で限界を決めない

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日本人は厳しい状況や立場に置かれた時に〝崖っぷち〞という表現をよく使う。読んで字のごとく、崖のふちだ。ちょっとでも踏み外せば、たちまち奈落の底へ落ちてしまう断崖絶壁。生きるか死ぬかの境界線で、ほんの少しの失敗や気の緩みが命取りになってしまう。

自分の場合、30歳を過ぎてもそこまで追い詰められている感覚はなかった。年齢や能力に少なからず自信があったのだろう。

きっかけは京都サンガF.C.を契約満了になったこと。なかなか次の所属チームが見つからず恐怖感を覚えた。その頃から意識が大きく変化していった。

若手時代から日々を全力で走ってきたことに偽りはない。ピッチ内外において常に100%を出しきり、自分に厳しく生きてきたつもりだ。

でも、同じ全力でも昔と今を比べると重みが違う。アビスパ福岡に加入してからは常に単年契約でプロサッカー選手を続けることになり、自ずと毎年が勝負になる。もっと言えば、毎日が勝負になる。

30代後半から変わった練習への取り組み方

練習だけでなく、日常生活における休養や食事へのこだわりも増した。それこそ毎日が本番の感覚だ。強い覚悟が必要で、必死さが増し、より洗練されていく。

一般的には高得点と言っていい80点や90点でも落第してしまうかもしれない。常に100点を取り続けなければ次のステップに進めない。それくらい追い込まれた気持ちになり、他にやれることがないかを細かく探し、突き詰めた。

こうして考えてみると、20代の頃はもっとできることがあったのかもしれない。練習でミスをしても心のどこかで「次に取り返せばいい」と思っていた。次の機会が与えられるという前提に立っていたからで、本当の意味での危機感はなかったし、まだまだ甘かったとさえ感じる。

30代後半に差しかかってからは、試合だけでなく練習への取り組み方が変わっていった。いや、変えなければいけなかった。100%どころか120%を出しきる。そうしなければ衰えつつある自分はチームのレベルについていけない。

若い頃は、出しきったと思い込んでいるだけで、実は体のどこかに予備タンクが内蔵されていた。今もできることならば余力を持っておきたいけれど、40歳になった自分にそんな余裕は残っていない(苦笑)。

試合出場が当たり前なら、公式戦でのパフォーマンスで評価を得ればいい。でも試合に出るためにはまず練習という本番があるので、毎日が必死だ。

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