ウクライナ侵攻を決断したプーチン大統領の変質 クレムリン最高幹部も異論挟めない独裁者化が進む

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戦況とは別に今でも残る大きなナゾがある。プーチン氏がなぜこのタイミングで侵攻に踏み切ったのかという問題だ。軍部が大統領に電撃作戦を提案したとしても、これはプーチン氏の決断を受けてのものだろう。

筆者の見方では、侵攻の理由は3つある。①ロシア依存を深めるベラルーシとともに、ウクライナも掌握することで「スラブ系3カ国によるミニソ連」を実現。これを成果に2年後の大統領選で5回目の当選を果たす、②プーチン氏に批判的なバイデン政権の登場で、ゼレンスキー氏が強気になりNATO(北大西洋条約機構)との軍事協力を強化したため危機感を強めた、③飲料水不足が深刻なクリミアや、東部両「共和国」の運営はロシアが支えているが、財政的に丸抱えでは厳しい。ウクライナ全体を属国化、独立採算にすることで負担を免れる、である。

アメリカはなぜ侵攻を防げなかったのか

いずれにしても2021年7月以降のプーチン氏は、ウクライナに対する異様としか言いようのない脅迫的発言が目立っていた。「ウクライナの真の主権はロシアとの友好関係の中で初めて可能」と言ったが、今のウクライナに主権はないと言い切ったも同然の発言だ。2021年11月には、ウクライナ国境に軍部隊を集結させた。さらにウクライナ軍幹部が「ロシア軍は2022年1月か2月に侵攻する計画だ」と暴露した。

しかしこれだけ「状況証拠」が揃ったのに、アメリカは侵攻を事前に防げなかった。NATOは加盟国ではないウクライナを守る義務を負っていないとはいえ、国際法に明確に違反する侵攻を阻止できなかった国際社会には反省が重く残るだろう。とくにバイデン政権の責任は大きい。

元々バイデン氏個人は従来から際立った「反プーチン」論者だ。2012年にプーチン氏が首相から大統領に復帰した際には、これに強い反対を表明するなど内政干渉すれすれの行動に出た。政権発足後の2021年3月には、「プーチン氏は殺人者」発言も飛び出した。しかし、対中封じ込めに外交資源を集中したいとの思惑から、対ロ対決姿勢を「戦略的安定」論へと軟化した。ロシアが望んだ6月の初の米ロ首脳会談にも応じた。先述した、プーチン氏のウクライナへの脅迫的言辞が7月に始まったことは偶然ではないと思う。

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