ロシア軍の暴挙で高まる「原発破壊リスク」の恐怖 チェルノブイリ原発で新たな懸念が出てきた

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ウクライナを侵攻するロシア軍は、国際条約で禁止されている原子力施設への攻撃を数度にわたって続けている。

2月24日、隣国ベラルーシから侵攻したロシア軍は、1986年に大爆発を起こして廃炉になったチェルノブイリ原子力発電所を占拠。3月4日には、ウクライナ南部にある欧州最大規模のザポリージャ原発を制圧した。さらに3月6日には、ウクライナ第2の都市ハリコフにある原子力研究施設を攻撃。変電所の破壊や、建屋の損傷などの被害を生じさせている。

稼働中の原発を占拠したロシア軍の目的について、原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、「ウクライナの電力供給を掌握することにあるのではないか」と推測する。総発電量に占める原子力の割合が5割を超えるウクライナにとって、「原発をロシアに掌握されることは、いざというときに電力供給に支障が出る可能性を意味する」(松久保氏)。

ウクライナは現在、欧州連合(EU)諸国との間で国際送電網がつながっておらず、電力ネットワークが他国から孤立している。そうした中、ロシアに原発を占拠されることは、ウクライナにとって脅威となる。

ロシアが情報を操作

ロシアのプロパガンダも激しさを増している。「ウクライナが核兵器開発をひそかに進めている」などと言いがかりをつけようとしていると、ウクライナ政府はSNSで批判している。

ウクライナ原子力公社によれば、ロシア側の14人のジャーナリストがロシア軍に占拠されているザポリージャ原発に入った。同公社はSNSで「近日、(ロシアは)ウクライナ側の核開発に関する偽の情報を発表するだろう」と注意を促している。

他方、タス通信などロシアの主要メディアは、ウクライナが核兵器やダーティーボム(放射性物質が含まれた爆弾)を製造していたことがわかったなどと、ロシア軍やロシアの情報機関などからの情報を基に報じている。そのうえで、チェルノブイリ原発を占拠したことにより、「ウクライナ政府が軍事目的で核廃棄物を使用するリスクを最小限に抑えることができる」などと、ロシア軍の侵略行為を是認している。

しかし、ロシアの主張には根拠がない。

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