ロシア軍の暴挙で高まる「原発破壊リスク」の恐怖 チェルノブイリ原発で新たな懸念が出てきた

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原子力資料情報室の松久保氏は、「戦闘行為によって外部電源や取水口が被害を受けた場合、核燃料が冷却できなくなるおそれがある」と警鐘を鳴らす。

ザポリージャ原発については、3月9日時点で最悪の事態を免れており、曲がりなりにも運転員の交代勤務が認められている。とはいえ、ウクライナ原子力規制検査庁は、原発周辺での食料確保の困難や、ロシア軍による原発の職員への心理的圧力、職務に対する干渉への懸念を表明している。

チェルノブイリで電力供給が途絶

一方、チェルノブイリ原発の職員約210人は2月24日以来、交代できずに連続勤務を強いられている。職員はロシア軍の人質になっているに等しい。

そうした中、新たな懸念も出てきた。3月8日のIAEAの発表によれば、チェルノブイリ原発における核物質の移動を監視するシステムからデータ送信ができなくなっている。さらに9日、ウクライナのクレバ外相はツイッターで、チェルノブイリ原発では送電網の損傷によって電力供給が途絶し、使用済み核燃料貯蔵設備の冷却システムが停止していると明らかにした。予備のディーゼル発電機で48時間は冷却ができるものの、電力供給を早期に復旧させることが必要だと訴えている。

ロシア軍は、4基の原子炉を擁する南ウクライナ原発にも近づいている。同原発の南方約100キロメートル地点で交通の要衝であるムイコラーイウやその周辺で戦闘が続いており、同原発にも危険が迫っている。

原発については、2011年の福島原発事故以降、シビアアクシデント対策を強化することで安全性は高まったと説明されてきた。だが、ロシア軍の侵攻は、その対策が戦時下ではまったく無力であることを示している。危機は今なお去っていない。   

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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