ロシア軍の暴挙で高まる「原発破壊リスク」の恐怖 チェルノブイリ原発で新たな懸念が出てきた

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国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は3月4日の会見で、「核開発に関してロシアの非難を裏付ける客観的な情報はない」と発言し、ウクライナが核不拡散のルールを遵守しているとの見方を示した。ロシアが原子力施設を占拠することに正当性はまったくない。

それどころか、ロシアによる原発への攻撃は、一歩間違えば世界を巻き添えにする大惨事になりかねない危険な行為だ。IAEAのグロッシ氏は3月7日の会見で、「ロシアの軍事行動は、ウクライナやロシアを含む近隣諸国の人々の生命を危険にさらしている」と指摘。ザポリージャ原発をめぐる事態は「危機一髪だった」と説明した。

欧州がおしまいになる

ロシア軍は3月4日未明に稼働中の同原発へ兵を進め、原子炉から数百メートルしか離れていない原発の訓練施設を攻撃した。現在、ロシア軍の管理下で、原子炉の稼働が続けられている。

ウクライナのクレバ外相は、同原発がロシア軍の砲撃を受けて訓練施設から火災が発生したとしたうえで、最悪の場合、「(原子炉が)爆発すれば、チェルノブイリ原発事故の10倍の規模の被害になっていた」とツイッターに投稿した。ウクライナのゼレンスキー大統領は「欧州がおしまいになる」とまで言い切った。

原発の安全やテロ対策に詳しい原子力コンサルタントの佐藤暁氏は、6基ある原子炉のうち、攻撃時に4号機が運転を継続していたことから、「ロシア軍は見境なく攻撃したわけではない」としたうえで「万が一、攻撃がエスカレートしていたら、発電中の原子炉が真っ先に事故を起こした可能性がある」と説明する。

佐藤氏によれば、最悪のシナリオとして、ミサイルが原子炉に命中して格納容器を貫通し、そこに焼夷弾などの燃焼エネルギーの大きな爆弾が投下された場合、手のつけられない事態が想定されるという。そうなった場合、「放射性物質が近隣諸国を巻き込み広範囲に拡散し、その影響は10メガトンの水爆をもはるかに上回る」と佐藤氏は指摘する。

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