急拡大するウクライナ避難民の支援で重要なこと 小俣直彦・オックスフォード大学准教授に聞く

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ウクライナの人々の大規模な国外への避難が続いている(写真:Bloomberg)
ロシアによる侵攻で、ウクライナからはすでに200万人が脱出した。難民の急拡大が伝えられ、事態の長期化も懸念されている。難民研究に早くから取り組み、『アフリカの難民キャンプで暮らす』の著者でもあるオックスフォード大学国際開発学部・難民研究センターの小俣直彦准教授に話を聞いた。

――ウクライナからの脱出はすでに200万人を超えました。国連は400万人と予想していますが、もっと増えるかもしれません。

ウクライナからの避難民はスケールが大きくなって、スピードも早くなっている。ロシアによる侵攻のリスクは懸念されていたものの、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も含めて、国際機関でもさすがに武力侵攻は起きないだろうという見通しが支配的だったと思われる。準備が後手に回っていないか、人道支援がキャッチアップできているのかどうかが懸念される。

さらに、戦闘の結果がどうなるかは別にして、戦闘は短期で決着が付くと言われていたが、もう2週間続いている。交戦状態が長引けば、受け入れ国の備蓄や、今は集まっている物資がだんだん足りなくなってくるリスクも当然ある。

見落とされがちなのは、国内に残された市民

また、気になるのは、ウクライナ国内にとどまらざるを得ない国内避難民の状態だ。逃げるのにもリソースが必要だ。移動には体力やお金、伝(つて)などが必要だ。私の知っているアフリカやシリアの難民のケースでは、国内にとどまる人は、とどまったほうが有利な人と逃げたくても逃げられないという人に分類される。

交戦中なので、ウクライナ国内の実態が見えない。健康・医療上の理由で国内に残らざるを得ないとか、車がない、ガソリンが買えないなどで国内にとどまっている人の数や暮らしぶりが把握できない。電気や水道などのインフラが破壊され、病院も攻撃された。ウクライナやポーランドは3月初旬でも非常に寒いので、寒いということだけでも健康にダメージを与える。病気でなくても高齢者や子どもには過酷だ。まずは停戦が必要だ。紛争状態が続く以上そういう人たちが出続けるし、彼らがより大きな被害を受ける。

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