ウクライナ侵攻についてのロシア軍の、ひいてはプーチン大統領の意向がまったく読めない。チェルノブイリ原子力発電所を砲撃したり、揚げ句の果てには小児病院を空爆したりと、そのやりくちは常軌を逸しているとしかいいようがない。
だが近年、戦争の形は多少なりとも変わりつつあったのではないか? もちろん戦争自体が過去のものになったわけではないが、それでもいまや主流はサイバー戦や情報戦などの「非軍事的手段」なのではなかったか?
ロシアの軍事・安全保障政策を専門とする小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師の著書『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書)の冒頭にも、次のような記述がある。
現代の安全保障で必須の「ハイブリッド戦争」
例えば2014年のクリミア危機の際、決して強くはないはずのロシアが瞬く間にクリミア半島を併合してしまったのも、特殊部隊による無血占領、民兵の動員、多くの人々の認識を操作する情報戦、電磁波領域(EMS)やサイバー空間での戦闘など、旧来の戦争とは異なる手法を用いたからではなかったか。
だが本書を読み進めていくと、現在のロシアの露骨な攻撃にはまったくあてはまりそうにないことがわかる。重要なポイントは、上記の引用部分にある「現実の戦場に加えて」という部分だ。
「サイバー戦」や「情報戦」ということばには相応の未来的なインパクトがあるだけに、ついそちらにばかり目を向けてしまいがちだ。しかし、著者はそもそも上記の記述において、「現代の戦争は非軍事的手段がすべて」であると断じているわけではない。
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