「現実の戦闘+非軍事的手段」だからハイブリッド(混合)戦争と呼ばれるわけで、戦争そのものが非軍事的手段だけに置き換えられたわけでは決してないのだ。
結論を先に述べるならば、非軍事的手段は戦争の「性質」そのものを変えるとまでは言えず、軍事力は依然として戦争の主役であり続けている、というのが筆者の考えである。(115〜116ページより)
非軍事的手段は戦争の「性質」を変えない
現在のロシアにおいて、情報空間が「非線形戦争」の戦場と認識されているのは事実であり、国内統制が広義の国防と捉えられる傾向があるのは間違いないようだ。しかし、ひとたび大規模に暴力が行使されるような事態となれば、そこでは軍事力が中心とならざるをえないということである。
ロシアが実際に行なった軍事介入や大規模演習の動向もこれを裏付ける。これらの諸事例において中心的な役割を果たしているのは軍事的闘争手段=古典的な軍事力そのものであって、非軍事的手段はその威力を増大させる「増幅装置」や補助手段と位置付けられてきた。言うなれば、非軍事的手段は戦争の「特徴」を変えるものではあっても、「性質」の変化にまで及ぶものとは言い難い、ということになる。(116ページより)
もちろんサイバー戦や情報戦などの非軍事的手段も活用され、民兵やPMC(Private military company=民間軍事会社)のような非国家主体も用いられてはいるだろう。だが、それらはいずれも正規の軍事力に取って代わるようなものではなく、近年のロシアが関わってきた軍事紛争においては、あくまでも軍事的手段(暴力を闘争手段とする軍事力)が中心にあったということだ。
なるほどそう考えると、今回のロシアの立ち回りにも説明がつくのかもしれない。もちろん、だからといって肯定する気はみじんもないが。
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