急拡大するウクライナ避難民の支援で重要なこと 小俣直彦・オックスフォード大学准教授に聞く

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キエフの地下鉄に避難した人々(写真:Bloomberg)

――戦闘中だとなかなか国連から人が入るというわけにも行かないですね。ですが、停戦協議がなかなかまとまらない。

交戦が続くと支援が届かない。落としどころがなかなか見えてこないのが不安だ。ロシアに対する糾弾が先行して、経済制裁が行われているが、今のところ、狙った効果はそれほど上げられていないように思う。

経済制裁が直撃するのは貧しく弱い人たち

おまた・なおひこ/オックスフォード大学国際開発学部准教授。1970年東京都生まれ。1994年東京大学卒。2004年米タフツ大学大学院修了。国連機関、NGOでアフリカの開発・難民支援の現場に携わり、研究の道へ。2012年ロンドン大学博士課程修了、オックスフォード大学国際開発学部難民研究センターへ。アフリカ、中東を中心に調査を行っている(写真:本人提供)

国際社会としては、武力を使わずにロシアの暴挙に対抗するには経済制裁しか手段がないのかもしれないが、経済制裁はいちばん弱い人たちを直撃する。武力侵攻を決定した幹部ではなく、ロシアの最底辺の貧しい人にまず打撃を与えることになる。

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が、侵略は許されないとしながらも、経済制裁は最善の解決策ではなく、停戦交渉を求めるとコメントしたことが伝えられた。私もこの意見に同意だ。軍対軍の戦いではなく、一般市民が被害に遭っている以上、停戦がとにかく最優先だと思う。

――2015年にも欧州では難民危機がありました。過去の事例と比べてみて気づく点はありますか。

今回の件では最近の他の事例と比べると、今回の事態はそれまでとの違いばかりが目立つと感じている。シリアやアフガニスタン、アフリカなどいずれも内戦が主たる原因で、海や陸をわたって他国へ逃れている。今回は国家対国家の対立であり、ロシアという良くも悪くも発言力のある大国、しかも国連の常任理事国が難民を生み出す主役になっている。また、ウクライナは欧州の一部であり、欧州が震源地になっている。

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