大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

野党や多くの市民団体はこれまで主に、賭博のあがりで経営を支える倫理面やギャンブル依存症などの問題を指摘して反対・慎重論を唱えてきた。ところが2021年12月に大阪市が、建設予定地の土壌対策費として790億円を負担すると発表して以降、財源や資金、経済効果などに以前にも増して注目が集まることになった。

松井一郎市長はこれまで「事業者がお金を払って建ててくれる。市は家賃をもらうだけ」と話していた。大阪市が埋め立て地を取引した際、土壌改良費を負担した例は過去にない。こうした発言や前例との整合性について、市議会でも質問や批判が相次いだ。

IR事業者は市との定期借地契約に基づき毎年25億円の賃料を払う。35年間の契約期間満了まで払い続ければ計875億円となるが、途中撤退なら市の土壌対策費が賃料を上回ることにもなりかねない。

情報公開請求しても黒塗りばかり

それでは経済効果や府市の実入りはどうか。れいわ新選組の大石あきこ衆議院議員が経済効果の元データについて大阪市IR推進局に情報公開請求したところ、ほとんど黒塗りで返ってきた。となればチェックのしようもないのだが、どの数字も相当な大風呂敷と感じる。

そもそも計画が掲げる4200億円の売り上げを達成しているカジノは、世界を見渡してもマカオのベネチアン、ギャラクシーなどごく少数だ。府市がことあるごとに先行例として取り上げるシンガポールのカジノも単体では届いたことのない数字だ。「まず無理」とみる専門家もいる。

カジノで売り上げの大きな部分を占めるのは、大金を常に賭ける「ハイローラー」の法外な支出だ。世界一の賭博の街マカオでは「ジャンケット」と呼ばれる接待業者が主に中国人の大金持ちを連れてきて特別な待遇で遊ばせることで多くの売り上げを稼いできた。客が賭場で使った金の一部をコミッションとして受け取る。客への一時貸し付け、資金回収など一筋縄ではいかない裏方業務を担う。

ところが「共同富裕」をうたう中国・習近平政権の意向で、2021年以降、マカオ政府がジャンケットの規制に乗り出し、マカオのカジノ収益は大きく落ち込んだ。

次ページ「ジャンケット」排除で経営が成り立つか
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事