大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか

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2025年の大阪万博の開催地であり、総合リゾート(IR)が建設される予定の大阪・夢洲地区(写真・ISO8000/PIXTA)

カジノを含む統合型リゾート(IR)整備計画を国に提出する期限(2022年4月28日)を前に、誘致をめざす各自治体で採算や資金繰りへの不安が膨らんでいる。和歌山、長崎両県は3月初旬の段階でなお資金調達について議会や住民に十分な説明ができず、先行きに暗雲が垂れ込める。

そのような中、誘致活動では先頭を走る大阪は、アメリカのカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが中心となってつくった事業会社と大阪府、大阪市の3者で2月16日、整備計画を発表した。

事業会社の撤退に関する条項

それによると、初期投資1兆0800億円、経済波及効果1兆5800億円(建設時)、1兆1400億円(運営)で、年間売り上げは5200億円(うちカジノ分4200億円)。大阪府・市は毎年740億円の納付金を受け取るほか、入場料収入320億円も得られ、120億円の税収も入る。構想段階と変わらぬバラ色の夢が完成予想図とともに描かれていたが、同時に発表された3者による基本協定の概要版には、これまで明らかになっていなかった重要な規定が記載されていた。

「基本協定の解除」の項目で、事業者は国から正式に認定を得た30日後に、協定を解除するかどうかを判断することができ、解除の場合、さらにその後の60日以内に通知すればよいとされていた。MGM、オリックスに加え大企業が出資する事業会社が設立され、計画も発表しているのだから、事業は当然完成し実施されるだろうと筆者は考えていたが、どうもそうとは限らないらしい。

解除の是非を検討する条件として、税務上の取り扱い、カジノ管理委員会規則、国際競争力、国際標準の確保 、土地・土壌に関する大阪市における適切な措置の実施等に加えて新型コロナウイルス感染症、国内外の観光需要の回復の見込みなどを挙げている。つまり日本政府が今後決めるルールや大阪府・市の対応に不満だったり、コロナ禍で「鎖国」状況が続いていたり、見込みほど観光客が呼び込めないなどと判断したりすれば、事業会社は「降りる」ことができるという話だ。

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