20代で故人と向き合う仕事選んだ彼女のやりがい エステ勤務、中国留学など経てエンバーマーに

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「エンバーミング」の処置を施す技術者、「エンバーマー」。彼ら彼女らは、何に魅力を感じてこの仕事を選び、プロとして働き続けているのでしょうか(写真:yosuke7311/PIXTA)

葬儀サービスのひとつに「エンバーミング」(遺体衛生保全)というものがあるのをご存じだろうか。

エンバーミングとは、遺体に消毒殺菌、防腐、修復、化粧を施し、生前の姿に近づける処置のこと。これにより遺体を長期にわたって保つこともできるため、時間にとらわれずにお別れをすることも可能だ。これらの処置を施す技術者を「エンバーマー」という。

エンバーマーの彼ら彼女らは、何に魅力を感じてこの仕事を選び、プロとして働き続けているのか――。IFSA(日本遺体衛生保全協会)認定のスーパーバイザーで、専門葬儀社最大手の公益社の大阪本社・エンバーミング事業部に勤務する安西涼子スーパーバイザー (43歳)に話を聞いた。

前回:親から反対も19歳で「湯灌師」目指した彼女の決意

美容エステ勤務→中国留学

安西さんが、31歳でエンバーマーになるまでのプロフィールはユニークだ。

人をきれいにすることに興味があった安西さん。高校生になった頃から23歳のときに中国へ留学するまで、美容エステで働き、高校卒業後はモード専門学校に入学。卒業後、中国の東華大学漢語学科に留学した。中国の文化に触れたことで異国の文化に興味を持ち、日本に帰国後、派遣で仕事をしながら、30カ国以上旅をしていた。

安西さんが27歳のときに転機が訪れる。友人から湯灌という職業があることを教えてもらい、それと同時にエンバーマーという職業があることも知った。エンバーマーに興味を持った安西さんだが、当時は、海外に行かないと資格が取れないと思っていたため、まずは湯灌を行っている会社に勤め湯灌師として働きだした。

その頃、知人から、「JR福知山線の脱線事故で友人2人を亡くしたが、顔を見てお別れができずつらかった」という話を聞き、やはり、遺体の修復などを通して生前の姿に近づけるエンバーマーになりたいと強く思った。

日本国内でエンバーマーになるには、IFSAが認定する養成校に入学し、2年間学んで卒業しなければならない。卒業後はIFSAによる資格試験を受験し、合格したら初めてエンバーマーになれる。

IFSAが認定するエンバーマー資格者のうち日本で活動しているエンバーマーは、約190名(2021年4月現在)いる。資格は、下位から「アソシエイトエンバーマー」「エンバーマー」「アシスタントスーパーバイザー」「スーパーバイザー 」と4段階あり、最上位のスーパーバイザーは現在65名だ。

IFSAの認定を受けてエンバーミング事業を行っているのは、24都道府県で25社・71エンバーミングセンター(2021年4月現在)あり、エンバーマー資格者は、これらの会社・センターに所属して働いている。

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