20代で故人と向き合う仕事選んだ彼女のやりがい エステ勤務、中国留学など経てエンバーマーに

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グリーフケアについては、エンバーマー養成学校でも学ぶが、さらに詳しく学びたいと思った安西さんは、JR福知山線脱線事故を契機に開催されるようになった「グリーフケア講座」(2年間)や上智大学グリーフケア研究所が開催している「グリーフケア講座」(2年間)に通って学んだ。

さらに2015年には、公益社が同社で葬儀を行った遺族を対象に運営している遺族サポート「ひだまりの会」の運営スタッフの一員となり、以来7年間、運営スタッフとしても活動している。この運営スタッフとしての活動が、どのようなエンバーミングを行えば遺族に納得、満足してもらえるのかに役立っているという。

エンバーマーの仕事のやりがいについて語ってくれた安西さん

「『ひだまりの会』では、ご遺族に接する機会がすごくあり、ご遺族の中には、エンバーミングをして送られた方もかなりいらっしゃいます。エンバーミングを行ったご遺族に、どうして行おうと思ったのか、行ってみてどう思ったなどを細かくお聞きできる機会が多いので、それがエンバーミングの処置にもすごく役立っています。

また、大切な人を亡くされたご遺族と触れ合うことによって、故人に対しても尊厳を持って向き合い、処置をしなければいけないということもよくわかりました」

そして安西さんは、「そのようにご遺族と接する機会があったから、故人にもご遺族にも寄り添ってこられたのかもしれません」と付け加える。

この仕事のやりがいは?

エンバーマーという仕事のやりがいについて、安西さんは、「一見、同じような流れ作業のように見えるかもしれませんが、故人様の状態もご遺族の希望も十人十色ですから、処置のしかたはすべて違います。

また、つねにうまくいくわけでなく、回り道をすることもあります。そういう面では大変な仕事ですが、それだけに最終形に近づけることができ、ご遺族から『元気だった頃のじいちゃんに近づいた』などと喜んでいただけるのが一番のやりがいです」と話す。

今後の抱負について尋ねると、「故人の最後のお姿というのは、自分の祖母のときもそうでしたが、やはり遺族の心に一生残ると思うのです。ですから、故人のお姿を生前に近い状態に戻すことが必要であり、そのためにはさらに技術を向上させていかなければならないと考えています。

自分はプロだから、完璧だからと思ってしまうと、勉強しなくなってしまうと思いますので、おごらず、つねに謙虚な気持ちで自己研鑽していくことが大事だと考えています」とつつましやかに語った。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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