「不良」社員が会社を伸ばす 太田肇著
この本を読めば、常識が覆えること請け合いだ。
本書でいう「不良」とは、いわゆる「ワル」だけではない。「優等生」というメインストリームには乗らないという意味で、「オタク」も不良の一員だ。それに加えて、「元暴走族」や「元ヤンキー」といった社員が今、そしてこれからの社会に不可欠だという。
オタク系の場合、社交的とはいえないが得意分野にハマったときの力はすごい。やんちゃ系は、幾多の修羅場をくぐり抜けてきたことで培われた“人際の強さ”が魅力だ。そして共通するのが、不器用な反面、ときに制御不能になるほどの行動力や集中力を持ち合わせていること。
彼らの能力を発揮させるために一番大切なのは「場」だ。彼らは異動やトラブルなどを機に、活躍する場合が多い。町工場で厄介者扱いされていたヤンキー社員が会社を救った例や、配置転換によって快挙を成し遂げたオタク社員のエピソードと対比するように、海外勤務での挫折に立ち直れない「優等生」や「エリート」の元気のなさが示されているのも印象的だ。
さらに、はみ出し者を積極的に受け入れる樹研工業や、刑務所で採用面接を行った千房など、不良社員に活躍の場を与えている企業のケースも、実例を挙げて紹介している。計り知れない潜在能力を隠し持つ彼らをどう受け入れるか、それは会社の度量が試されているようでもある。
一貫して不良社員のパワーと優良社員の衰退、そして組織がひっくり返るまで、が論じられているが、第3章の『「不良」のやる気は「優等生」のやる気に勝る』は特に興味深い。