海外就職、英語力がなくても意外にOK 新卒、第二新卒で海外に職を得た3人の場合

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なるほど。業務によって求められる英語レベルや専門性の有無もまちまちなわけである。金子さんは、海外での生活を体験できるだけでも貴重な経験なわけだから、難しく考えすぎず、もっと気軽に多くの若者が海外での現地採用へと挑戦してほしい、とエールを送っている。

新卒に立ちはだかるビザの問題

少し話がそれるが、新卒で現地採用を考える際に重要な問題がビザである。香港では一定期間の職務経験が必要であり、シンガポールなどでも世界大学ランキングのトップ200校を卒業した者のみ要件を満たすとされる。

石川さんもインターンのためインドを初めて訪れようというとき、まず、ビザがとれるかどうかという問題に直面したという。金子さんが住むベトナムは、最近、法令に変更があり、5年間以上の社会人経験が必要となった。村井さんも、ビザの更新プロセスがうまくいかず、すばらしい時間を過ごしたフランスの建築事務所を離れなくてはならなくなった。こういった問題には十分注意して、事前に対策を立てておきたい。

インタビューを終えて

新卒ですぐに海外へと飛び出し、現地での雇用を得た3人の経験は、多くの重要な情報を与えてくれた。まず、新卒から海外で、しかも裁量を持って仕事をすることは実際に可能で、これは本人にとって有益な経験となるに違いない。

また、職を得るためのプロセスとして現地に入り込み、そこで情報やネットワークを得ることが、円滑な採用へと結び付いたケースも興味深い。採用要件として、語学や専門性が求められることは多く、あったほうがいいに違いないが、職種によっては、そこまで難しい要件を満たす必要はないこともわかった。

先行きの見えない時代である。特に、日本の若者は選択肢を海外にも求めていく時代に入った。新卒から、日本とは違った環境に身を置き、多くを経験していける海外現地採用は、今後、より重要な選択肢となるのではなかろうか。国外への好奇心や情熱を持つならば、挑戦してみてはいかがだろうか? 壁は、思っているほど高くないのかもしれない。
 

石崎 弘典 インド進出コンサルタント

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いしざき ひろのり / Hironori Ishizaki

東京大学文学部フランス語フランス文学専修卒業、米国公認会計士試験合格。
在学中は休学して、パリ大学ソルボンヌに留学、音楽を中心にフランス文化を学ぶ。
現在は、インドの大手会計事務所に勤務し、日系ほか外資企業のインド市場進出支援を、税務・法務・財務の観点から行っている。インドビジネスに関する知識を活かし、メガバンクなど(みずほ、政策投資銀行)が発行するビジネスジャーナルへの寄稿、また政府系機関(JETRO)や外資系銀行(HSBC)などが主催するセミナーへもスピーカーとして登壇している。本業の傍ら、横浜シンフォニエッタ(オーケストラ)の海外事業アドバイザー等、芸術と社会をつなぐエージェントとしても活動している。
 

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