フランスの建築事務所に現地採用された村井庄一さんも、インターン先の企業からそのまま内定を受けることとなった。
村井さんは日本が誇る世界的建築家である隈研吾氏の下で学び、フランスではドミニク・ペローというこれまた世界でも著名な建築家と共に仕事をした建築エリートだ。当時のお話を伺ってみたい。
村井「研究室は建築デザインに関する実践と考察を行う場所であり、研究室教授は、隈研吾という建築家でした。所属する学生の半数以上が海外からの留学生であり、なおかつ年齢も20代から30代後半までと幅広く、異なる国籍と経歴を持つ学生たちが集った環境で、自然と私も海外を意識するようになりました。
そんなときに学校の協定の留学制度に募集がかかっていたので、それに応募しました。留学研修制度を利用して、フランスの設計事務所に飛び込むことになったのです。フランスのドミニク・ペロー・アーキテクチャーというところでした。そこでの仕事が評価され、インターンを終えた後は同事務所で正式に採用してもらうことが決まりました」
新卒でも裁量を与えられ、能力と専門性を求められる
さまざまな縁から生まれたチャンスを見事につかんだ2人だが、現地にいるからといって誰もが人気企業での内定をもらえるわけではないはずだ。求められる能力には、いったいどんなものがあるのだろうか? 業務内容と併せて、聞いてみたい。
石川「業務内容は、日系企業向けの事業戦略系コンサルティングといった感じです。プロジェクトリーダーのようにプロジェクトを実際に回していくのが主な役割です。コンサルタントが30人くらいのまだ小さな会社で、ベンチャー企業のようなものです。成長市場のインドでは、若手でも大きな裁量を持たせてもらうことが可能です。エキサイティングな案件に挑戦できる環境があることが何より幸せです。
もちろん同僚の大半はインド人で、提携交渉先もインド人。日本人とは違うコミュニケーション方法・考え方をしなければならないという点はいつも心掛けています。英語も話せないでは済まされません。あえて厳しい言い方をすれば、海外の人だって、英語もできず、専門性もない日本人とわざわざ働きたいなんて思いません。まだまだどちらも足りませんが、何らかの価値を出してこそ、そこで働く資格があるということを肝に銘じて、精進する毎日です」
村井「パリでは、最初からプロジェクトメンバーとして業務にかかわることができて、多くの経験をさせてもらいました。しかし、現場は厳しいものです。上司は、自分が認めない相手にあまり興味がなく、当時の私がプロジェクトに関して質問をしても素っ気ない返事を返してくるだけです。
それでも、自分のできることをつねに模索し、懸命にやるしかありません。私はフランス語がうまくなくて苦しみましたが、逆を言えば、模型と図面という、建築の言語でコミニケーションをとっていけることに気づき始めました。
数カ月経ったある日、上司が私の前にやってきて、SHOICHIにこの仕事を任せたいと、言ってくれました。スケジュールやコンセプトの大枠は決まっているが、細かな箇所に関しては自由に決めてほしいなど、彼が私に歩み寄ってくれていることを感じた瞬間でした。
海外の建築事務所で働くには、高度かつ専門的なスキルが必要です。しかし、それを手に入れた者であれば、現場での日々の努力を怠らなければ、多くの機会をつかみ、裁量を持って、やりがいのある仕事をすることができるのではないでしょうか」
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