「職場の妊婦いじめ」が法的に許されない理由 最高裁判決が示した救済の方向性

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妊娠した女性にとっては通勤も一苦労だ(写真:Ushico/Imasia)

広島に住む理学療法士の女性が、妊娠を理由にした降格は違法として勤務先の病院に損害賠償を求めていた裁判で、最高裁判所は10月23日、原告の請求を認めなかった高裁判決を取り消し(破棄し)、審理を広島高等裁判所に差し戻す判決を言い渡した。

2008年に妊娠した原告が勤務先に業務の軽減を求めたところ、管理職の地位から降格・減給させられたというのが事件の主な概要。女性は管理職手当の賠償などを求めて、2010年に勤務先の病院を提訴していた。

妊娠を理由に退職を求められたり、妊娠をしている状態の女性に対して従前と同様の労働条件を課したりするなど、妊娠を理由とする嫌がらせは、「マタニティハラスメント」(マタハラ)とも呼ばれる。

これまでと同じペースで仕事をこなせない

妊娠をすると女性は外見に関わらず様々な身体の変化を生じる。疲れやすくなったり、つわりで気持ちが悪くなったり、腰痛、頭痛に悩まされたり――。妊婦は、日々、体調を気遣いながら生活をしている。働く女性が妊娠をした場合に最も問題になるのが、これまでと同じペースでは仕事をこなせなくなることだ。産前産後は仕事を休まなければならず、その後の育児のためにも長期間職場から離れることを余儀なくされる。

妊娠とはそういうものなのだが、残念なことに、妊娠を理由に一部の職場ではさまざまな嫌がらせに発展することがある。しかし、そもそも「労働基準法」「男女雇用機会均等法」(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)などの労働法規は、このようなマタハラを許容していない。妊娠・出産する女性労働者を保護するための規定が、ちゃんとあるのだ。広島の事件の最高裁判決も、これに沿っている。

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