「職場の妊婦いじめ」が法的に許されない理由 最高裁判決が示した救済の方向性
専門的だが、関連する条文を引用しよう。
■労働基準法65条
■男女雇用機会均等法
今回の最高裁判決のポイントは、女性労働者が妊娠した場合に軽易業務へ転換させることをきっかけに管理職の地位から降格、減給する措置は原則として男女雇用機会均等法が禁じている妊娠を理由とした不利益取り扱いにあたるとした点にある。
その上で、①女性労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は②妊娠を理由とした不利益取り扱いを禁止した男女雇用機会均等法の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、例外的に降格、減給する措置をとっても男女雇用機会均等法の禁止する妊娠を理由とした不利益取り扱いにはあたらない――としている。
労基法は「人たるに値する生活」を守る
そもそも、労働基準法は、労働者が「人たるに値する生活」を送るための労働条件を保障している法律である(労基法1条1項)。女性労働者が妊娠、出産、育児を安心して過ごせなければ「人たるに値する生活」とはいえない。
一部の企業では妊娠をした女性をあたかも欠陥商品であるかのごとく扱い、職場から排除する動きがある。こわいのは、妊娠は自己責任という考えが職場を支配していたりしていることだ。この背後には、女性にかぎらず労働者を働く機械としかみていない現実がある。「労働は商品ではない」という当たり前の原則が、すっかり抜け落ち、男性の長時間労働が蔓延している中で、そのような働き方が当然とされてしまっている。
しかし、人間である以上、結婚もすれば、妊娠、出産をして、家族を作り生活していく。妊娠をすれば、これまでどおり働けなくなる。今回の最高裁判決は、「職場の妊婦いじめ」ともいえるマタハラによる女性労働者の被害を救済する方向性を示したものといえる。
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