定年延長は必要 労使は粘り強い交渉を--慶應義塾塾長・清家篤《討論・70歳まで働くべきか!?》
定年延長は必要 労使は粘り強い交渉を
日本は世界に類を見ない高齢化を経験しつつあり、従来のように60歳定年の後に年金生活という社会では、現役世代は税や社会保険の負担が大きくなるし、労働の負担も重くなってくる。逆にこれを避けようとすると、今度は高齢者の年金を大幅に削らなければならない。
ではどうしたらいいか。働く意思と仕事能力のある人ができるだけ長く働いて、現役にとどまることができるような仕組みを作るべきだ。
日本人には、長く働き続けることが自分の幸せにつながると考えている人が、欧州などに比べると非常に多いことが多種の調査で判明している。これは日本にとって好条件の一つだ。政策的にも、もともと55歳定年が主流だったものを1980年代以降に60歳へ引き上げ、2004年の法改正では65歳までの雇用確保措置を雇い主に義務付け、着実に高齢者就労を促進してきた。
反対に欧州では、70年代後半から80年代にかけて、失業率が非常に高まり、若い人たちに雇用の機会を与える目的で高齢者の早期引退を促進する政策を採った。その結果、欧州ではもともと引退志向が強かったこともあり、高齢者の労働力率が急速に下がった。しかも若年層の失業率は下がらずプラス効果はなかった。
今後の日本の課題は、まず定年をどうするかだ。私の研究などを含め、定年退職制度が高齢者の就労に明らかにネガティブな影響を与えることは、実証的に確認されている。具体的には、高齢者は就労意欲があっても、定年があるとそれをきっかけに仕事を辞めてしまうことが少なくない。また、定年後に第2の職場で働くと、第1の職場で培った技能を十分に生かせない確率が高くなる。