定年延長は必要 労使は粘り強い交渉を--慶應義塾塾長・清家篤《討論・70歳まで働くべきか!?》


 現在の改正高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保義務は定年後の再雇用(継続雇用)の形でもよく、8割以上の企業がこの継続雇用で対応している。しかし、最終的に年金の支給開始年齢が65歳になるときに、定年ははたして60歳のままでいいのか。この空白の5年間に不安定な継続雇用でしのぐというのは制度として好ましくないだろう。

年金制度も支給開始年齢をもう少し引き上げる必要があると思う。米国は満額年金支給年齢を段階的に67歳に引き上げており、多くの欧州諸国でも議論が始まっている。日本はそこまで行っていないが、欧米以上に高齢化が進み、かつ高齢者の就労意欲も高いのだから、支給開始年齢引き上げを考えていく必要があるだろう。ただ、その際には早期に減額年金を受け取って引退する自由を確保しておくことは大切だ。

支給開始年齢と併せて定年を延ばしていくとき、壁になるのは年功的な賃金と処遇の制度だ。この仕組みのままでは企業のコスト負担や管理職のポスト数の問題で、定年は延長しにくい。カギは中高年以降の賃金カーブをいかにフラットにしていくか。これを議論するときは、「高齢化という社会全体の課題を乗り越えるためにみんなで少しずつ賃金上昇を我慢しよう」という進め方のほうが、無理に能力成果主義を徹底するより望ましいのではないか。労使は我慢強く交渉を続けていく必要がある。

せいけ・あつし
1954年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学、92年より同大学商学部教授。2009年5月より現職。

(撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2010年10月2日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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